日本野鳥の会、日本自然保護協会、世界自然保護基金ジャパンと連名で、大阪ガス株式会社に中止の要望書を提出した。
希少鳥類の重要な生息地である勇払原野の東部(苫小牧市字弁天~むかわ町字鹿沼)。
今回「Daigasガスアンドパワーソリューション株式会社」が計画する「(仮称)苫東厚真風力発電事業」に対し、 事業の中止を求めた。
計画地は希少鳥類の宝庫
今回、日本野鳥の会が問題にした事業計画は、4,000kw級の風車を最大10基建設というもの。
面積は564.7ha(うち風車設置対象面積は332.1ha)と、 他の一般的な風力発電計画と比べて特に規模が大きいという訳ではない。
しかし、 開発地域指定後に放置されたことで生まれた湿地や草原に、 今では マガン、 タンチョウ、 オジロワシ、 オオワシ、 チュウヒ、 ハヤブサ、 オオジシギ、 アカモズなど絶滅危惧種等に指定される鳥類が多く生息 し、 計画地にある湿地や草原は、 さながら希少種の「ゆりかご」のようになっている。
計画地に生息する希少鳥類には、 風車建設によるバードストライクや生息地放棄などの影響を受けやすい種が多く、 この計画が希少鳥類に大きな影響を及ぼすことは確実。
特に国内希少種に指定されるチュウヒは、 国内推定数90つがいのうち7つがいが計画地内で繁殖しており、 風車建設で全つがいが生息地放棄等を起こした場合、 国内繁殖数の約8%が消失することになる。
では、希少鳥類が生息する、勇払原野とは?
道央圏にある石狩低地帯の一角で、 苫小牧から太平洋に至る一帯を「勇払原野」と呼んでいる。
勇払原野はかつて釧路湿原、 サロベツ原野とともに北海道の三大原野と言われていた。
約3万6千haの原野を構成する湿原の面積は、 過去50年間で著しく減少しているものの、 残された自然環境は、 ラムサール条約湿地であるウトナイ湖を含み、 水鳥や草原性鳥類、 絶滅のおそれのある鳥類の生息地として重要な役割を果たしている。
勇払原野の歴史と現状
勇払原野は台地、 砂丘、 湿原、 湖沼と複雑な環境を持ち、 先住のアイヌ民族が暮らしていた時代から、 川を利用した太平洋側と日本海側を結ぶ交通の要衝として、 またサケやシカ等の資源に恵まれた土地として、 自然と共存した文化が存在した。
勇払原野の開拓は江戸時代後期からで、 農業開拓は湿地と霧、 火山灰土に阻まれ、 あまり進展しなかった。
その後1960年代からの高度成長期に、 空港に近く、 海にも面した広大な平地として目をつけられ、 第三次全国総合開発計画の一環として、 国内有数規模の重化学工業地帯をめざした「苫小牧東部開発計画」がスタート。
しかしその後オイルショック等の社会情勢の変化により、 当初計画の1万700haの 土地の多くが未利用地域として残され、 また農地として開拓された場所が放置されて原野化し、 結果として鳥類の良好な生息地となっている。
事業者に計画中止を要請、 道や環境省へは事業者が計画を見直すよう指導することを要望
当会は、 風車建設が上記の希少鳥類の生息に影響を及ぼすことは回避不可能と判断し、 希少鳥類保護の観点から、 令和2年6月30日付で事業者に対し「(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する要請書」を提出し、 事業計画の中止を要請した。
また、 令和2年7月9日付で北海道知事宛および環境大臣宛に「(仮称)苫東厚真風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する北海道知事(環境大臣)意見に関する要望書」を提出し、 計画段階環境配慮書に対して事業の見直しを含む厳しい意見を事業者に提出、 行政指導をするよう要望した。
添付資料
(仮称)苫東厚真風力発電事業に対する要望書
日本野鳥の会 組織概要
組織名 :公益財団法人 日本野鳥の会(会員・サポーター 約5万人)
代表者 :理事長 遠藤孝一
所在地 :〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を楽しむ、
大人の生き方マガジンMOC(モック)
Moment Of Choice-MOC.STYLE