国連が定めた世界トイレの日(11月19日)に合わせ、「危うい世界に生きる 気候変動でさらに悪化する衛生の危機」と題する報告書を公表。
トイレ・衛生設備をめぐる現状と、 気候変動がこの衛生の危機に与える影響についてまとめた。
ウォーターエイドの新たな報告書は、 気候変動が衛生の危機に与える影響を浮き彫りにしている。
劣悪な衛生環境と、 コレラなど命にかかわるものの予防可能な病気の感染との関連性を強調し、 これらが気候変動の影響によって現在どのように悪化しているかを検証している。
安全に管理された衛生設備、 つまり排せつ物を安全に処理・処分されるしくみを備えたトイレを利用できる人々の割合は、 世界人口の半分以下、 45%にとどまっている。
一方で、 世界で20億人が自宅にトイレがない生活を送り、 このうち6億人以上の人々が野外排せつを余儀なくされている。
適切なトイレがない場所では、 人間の排せつ物が地下水を汚染したり、 川や湖に流れ込んだりして、 飲み水や料理、 洗濯のための唯一の水源を汚染してしまうことがある。
子供たちは病原体が広がった場所で遊び、 コミュニティ全体が、 排せつ物による汚染が原因の下痢性疾患に感染することも。
さらに、 保健医療施設の衛生設備が不十分な場合、 そうした施設自体が感染症のエピセンター(震源地)となり、 感染を広げてしまうリスクが高まる。
世界では、 保健医療施設の10カ所に1つは衛生設備が全くない状態にあり、 地域の保健医療施設で基本的な給水サービスを利用できない人の数は18憶人に上る。
清潔な水、 適切なトイレ、 正しい衛生習慣の欠如による下痢性疾患のために、 1年間に約82万9,000人が命を落としている。
約31万人の5歳未満の子供たちの命が奪われ、 それは2分間に1人の子供が亡くなっていることを意味する。
こうした事態は、 主に貧困なコミュニティで発生していることもあり、 なかなか報道もされない。
そうした中、 気候変動が衛生危機をさらに悪化させている。
洪水、 強力なサイクロン、 気温の上昇、 長引く干ばつなどの異常気象は、 劣悪な衛生環境に取り返しのつかないダメージを与え、 脆弱なコミュニティで病気がさらに拡大する原因となっている。
2030年から2050年までの間に、 気候変動を原因とする死亡者数は年間25万人増えると予測されており、 その多くは劣悪な衛生設備に関連すると考えられている。
ウォーターエイドは、 各国政府と国際社会に対し、 緊急に、 適切なトイレや衛生サービスのための資金拠出を増やすことを呼びかけている。
安全で信頼性が高く、 包括的な衛生サービスは、 感染症の拡大防止につながると考えるからだ。
ウォーターエイドはまた、 気候変動適応戦略に大規模な衛生サービスの改善計画を盛り込むよう各国政府に働きかけている。
これによりコミュニティにおける気候変動の影響を抑えることができるようになる。
ウォーターエイド・イギリスの最高経営責任者ティム・ウェインライトは次のように話している。
「世界は緊急の課題として、 新型コロナウイルス感染症に立ち向かっています。 しかしその一方で、 毎年何十万人もの人々の命が、 注目もされないまま、 清潔な水、 適切なトイレ、 正しい衛生習慣の欠如のために失われています。 (清潔な水、 適切なトイレ、 正しい衛生習慣へのアクセスという)基本的人権が保障されることで、 感染症を未然に防ぐことができます。 また、 気候変動の影響を受けやすいコミュニティでは、 適切な衛生システムがさらに重要になります」
「ウォーターエイドの報告書によると、 気候変動が衛生危機をさらに悪化させています。 異常気象がますます頻繁に発生し、 トイレや衛生システムが破壊され、 世界中の何百万人もの人々の健康と生活が危険にさらされています」
「各国政府は、 気候変動という差し迫った脅威に今すぐに対応する必要があります。 脆弱なコミュニティが気候変動への備えを強化する上で、 気候変動に強い衛生設備が果たす重要な役割を認識するべきです。 なぜなら、 気候変動の原因を生み出すことから最もかけ離れた、 世界の最貧困層が、 気候変動の影響による深刻な打撃を受けて苦しんでいるからです」
編集・構成 MOC(モック)編集部
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