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新型コロナによる経済停滞は、シングル家庭にどのような影響をもたらしたか?

 

 

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、 学校休校や外出自粛の措置が取られて2ヶ月あまり。

経済活動の停滞はシングル家庭にどのような経済的影響をもたらしたか?

NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、 5月1日から14日に、  「グッドごはん」利用者294名にアンケート調査を行った。

 

 

 

【収入への影響について】

結果、 パート等の就労可能時間が減るだけでなく、 失業などすでに多くのひとり親家庭に経済的影響がでている。

このままでは、 緊急事態宣言が解除され経済活動が再開しても、 多くのひとり親が困窮したまま取り残される恐れがある。

3月の就労賃金が反映されると思われる「4月の収入について」、 それ以前との変化を調査。

「収入が無くなった、 ほぼ無くなった」と回答したのは16.7%(6人にひとり)

来月から減収見込みと回答した人を併せると、 75%が収入減、 という結果になった。

解雇や内定取り消しを受けた人は、 少なくとも15人に上った。

 

 

 

・5月から復職予定だったが復職先がコロナの影響で休院中のため、 復職を見合わせたいと言う通知が来た。

・仕事を辞めざるをえなくなり、 4月5月収入0

・昼と夜と掛け持ちで仕事をしていますが、 昼間の仕事が3月から休業で家賃の支払いが困難。

・学校給食のパートなので仕事がなくなった。

・派遣切りにあい3月に解雇されたが、 失業手当の手続きに必要な離職票も会社側が遅れていて、 収入は母子手当のみ。

・勤務時間の短縮の為。 今月の手取り10万円程、 来月は5万円程になります。

 

ひとり親家庭が受け取れる「児童扶養手当」は、 母と子ども1人の母子家庭を例にとると、 収入が204.8万円未満の場合で、 全部支給の42,370円(月額/年6回の支給)。

就労による収入がなくなると、 年3回支給の児童手当を併せても、 タイミングによって無収入の月もある。

すでに家賃や光熱費を滞納している家庭も見られ、 政府の「特別定額給付金」を含めても、 厳しい生活が待っている。

失業した場合、 シングルマザーは再就職も不利と言わざるを得ず、 緊急事態宣言が終わり経済が回復を始めても、 ひとり親家庭の多くが困窮したまま取り残される恐れがある。

 

 

【支出への影響について】

4月に支払った支出に関して、 91.5%が「支出が増えた」と回答している。

(「通常と変わらない」7.1%、 「支出が減った」1.4%)

 

 

増えた支出の費目で最も多いのは「食費」95.6%。

続いて「光熱費」、 トイレットペーパーやマスク等の「日用品、 衛生用品費」。

子どもたちを含め自宅にいる時間が長いことで消費が増えるものや、 買い置き、 感染予防に必要なものの支出が増えていることがわかった。

食費の増加額については、 約1万円から3万円の間で増加している家庭が多くみられた。

 

 

Q 食品または食費を確保するために、 工夫したこと、 我慢したこと、 買えなかった(支払えなかった)ものはありますか?

・子どもは離乳食が始まったばかり。 自分の食事を1日1食でなんとか今まで通りの出費に押さえています。 食材は高いので基本的にお米とお味噌汁のみです。

・子どもの学習塾を辞めた。

・子どもの誕生日プレゼントを買ってあげられなかった。

・お米は自分は食べずに子ども達に食べさせた。

・先月分から家賃が未払い。

・お風呂をまとめて皆で入ったり3日に1度の洗髪、 洗濯物を減らしたり掃除機を使わず箒にかえました。

・食べれる野草を摘んだ。

 

 

【食生活について】

 

「変化なし」が最多であったが、それ以外では 学校等の休校により、 親子ともに食事量が減少している傾向がみられた。

給食が無くなったことや、 朝起きる時間が遅くなり朝昼兼用で一日二食になっている家庭が多くみられたほか、 食費の節約のために親が食べるのを我慢したり、 家庭によっては子どもも「一度も食事できない日があった」など、 深刻な栄養不足が懸念されるケースも見られた。

「2人にひとりが相対的貧困」と言われるひとり親家庭に於いて、 学校等へのアクセスが断たれることは「給食」というライフラインを失う可能性もある。

 

 

【子どもの学習への影響について】

また、 休校中の学習への影響を聞く質問では、 85%の家庭が「影響が出ている」と回答した。

内容として、 オンライン学習の環境がない(端末がない、 ネットワークがない等)、 ひとり部屋が無く集中できない、 勉強を教える時間がないなど、 の回答が多く見られた。

 

 

学習への影響

・学校でタブレット端末を持っている生徒対象で試験的にオンライン朝礼などを行なっているが、 持っていないので参加できない。

・スマホしかなく、 オンライン授業を長時間見続けられない。

・小、 中、 高の子どもがリビングで勉強してる為、 集中できない。

・わからない問題をすぐに聞けないので子供のモチベーションが低下している

・タブレット端末が買えないので携帯を使うしかないが、 同じ時刻に2人ともオンライン授業がかぶる。

・オンライン学習をするとのことですが、 タブレットは我慢させました。 現在高校3年生の受験生です。

・学校からの課題は大人が最低1人は家に居る前提で作られていると思います。 他の家庭より勉強量も理解も遅れてしまう。

小学生など低年齢の子どもの家庭学習は親のサポートを必要としており、 パートナーと家事や労働の分担ができないひとり親家庭では子どもの課題の把握すら難しいものになっている。

グッドネーバーズ・ジャパンの別の調査では、 「グッドごはん」を利用するひとり親の約半数は非正規雇用で、 テレワーク可能な環境にいる方の割合も一般的な家庭より少ないとみられる。

またひとりで学習に取り組める年齢になると、 オンライン学習ができる環境がないことで学習の機会が奪われ、 経済格差が学習の格差を生み出している。

 

【寄せられる不安の声】

・暗いトンネルの中に入っているような感じ。

・母子家庭だと母親が感染したら子供は?という不安といつも闘っています。

・亡くなった夫の事業を引き継ぎ、 負債も返済中。 仕事を掛け持ちして借金返済にあてているなかで収入減なのでまた借金が増えてしまう。

・子ども達3人と介護1の母を食べさせて、 着させて、 教育をつけてと不安しかないです。 仕事と増える家事労働にクタクタです。

・子どもが外に出れず、 筋力・食欲も落ち、 睡眠も乱れ、 月経不順も起きています。

・頑張って生きていこうと思う気持ちがなくなるのが怖い。

 

【子どもたちは希望】

新型コロナウイルスの感染拡大による経済の停滞がひとり親家庭に及す影響は、 今後も拡大すると思われる。

ひとりで不安と戦うひとり親の方たちですが、 少数ながらこのように前向きなコメントも見られた。

・ストレスが増えすぎましたが素敵な人たちもたくさんいることも感じました。ほんと皆様のおかげで生かされているなと感じます。

・今後の経済状況は、 とても不安です。 不安しかありません。 しかし、 子供と話す時間が増え、 高校生、 中学生、 男子2人年頃の子供達と、 笑いながら毎日過ごす時間が出来たことには、 幸せを感じてます。

・いつかは貯金もなくなるし、 仕事もこういう状況下で中々見つからず辛いですが、 不安を打ち消す子供の存在に感謝!

 

 

【回答者について】

アンケートに回答したのは、 普段からひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を利用する、 「マル親医療証」を持つ、 主に大田区、 品川区、 その他東京・神奈川・埼玉在住のひとり親294名。

※マル親医療証:ひとり親家庭等医療費受給者証(18歳未満の子どもを養育し、 所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)

 

グッドネーバーズ・ジャパンは、 2020年3月に安倍総理大臣が臨時休校の要請をする考えを示した際に、 ひとり親家庭が困窮すると考え、 通常行っている月3回の食品配付(利用できるのは一世帯につき月一回)に加え、 3月は登録者全員を対象に臨時配付を行った。

また、 4月以降は感染予防対策に努めながらも、 ライフラインである食品配付は引き続き行っており、 5月は対面配付を配送に変更。

6月の配付日は配付対象世帯を月165世帯から200世帯に増やすなど、 感染予防対策に努めながらできるだけ多くの利用者に食品を提供できるよう努めている。

臨時配付や配送への切り替えに際し、 多くの企業や個人に食品や資金の寄付を受けた。

ひとり親家庭の子どもたちがきちんと食事を取れるよう、 引き続き協力を募っている。

 

ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは

「グッドごはん」とは、 主に都内に住むひとり親家庭(※)を対象に、 食品を無料で配付する事業。

企業や個人の寄付によって集まった、 お米や調味料、 レトルト食品、 お菓子など、 約18,000円相当のカゴいっぱいの食料を毎月最大165世帯のひとり親家庭に配付している。

※1 当事業の対象者は、 ひとり親家庭等医療費受給者証(通称 「マル親医療証」をもつ、 所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭で、 東京都大田区の事務所に直接取りに来られる方を対象としている。

 

 

 

 

 

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