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リアルな不倫体験記 恋のあとさき 実話編【3】 まさか・・・娘の恋人と恋に落ちた私

 

 

恋のあとさき ~実話編【3】〜

事実は小説よりも奇なりという。不倫の取材をしていると、本当にそうだと実感する。

意外な相手と意外な出会いや再会をして、不倫に陥っていく女性たちに計算や打算はない。

「本当の愛」を求めて、愛に身を焦がす自分を求めて危険だと承知の上で関係を続けているのだ。この話は実話である。

 

 

まさか・・・娘の恋人と恋に落ちた私

「そんなバカな」ということが世の中にはある。「どうしてそういうことになっちゃったの!?」と他人から見れば思うようなことが……。

エイミさん(48歳)には、21歳になる大学生のひとり娘・マリさんがいる。夫ともども目の中に入れても痛くないほどかわいがってきた。

だからこそ、少々、過干渉になったところもある。

 

「娘が二十歳になったとき、まだ学生とはいえ成人になったのだから、あまり干渉しないようにしようと決めたんです。そうしたら娘は平然と朝帰りするようになって。いくらなんでも学生なんだからと諫めました。娘が朝帰りしたのは彼ができたから。彼だって親の気持ちを考えたら、少しは遠慮してほしい。そんな思いもあって、娘に彼を紹介するように言いました。知らないより知っておいたほうがいいと思って」

 

ある喫茶店で彼に会った。エイミさんは約束の30分も前から待っていた。時間になっても娘は現れない。

そのとき、「マリさんのお母さんですか」と若い男性に声をかけられた。それが娘の恋人・ダイキさんだった。

同じ大学の1年先輩だと名乗った彼は「座っていいですか」と許可を求めた。

 

「意外とちゃんとした子だわとほっとしました。そのとき娘から連絡があって、電車が事故で遅れているから20分ほど待ってと。彼となんてことない世間話をしました。彼は九州出身で、今はひとり暮らし。親からの仕送りが少ないのでアルバイトに明け暮れている。だから娘と会うのが深夜になってしまい、申し訳ないと頭を下げられました。交際に反対はしないけど、まだ若い娘なのだからそのあたりは斟酌してほしいと私も頼んで。でもとても好感のもてる子だったから、『たまには家にごはんでも食べにきなさい』と言ったんです。彼、とても喜んでいました」

 

遅れてきた娘は、母と恋人が仲良くしているのを見てほっとしたような顔をしていたという。

その日は久々にバイトが休みだという彼に娘を託して、エイミさんは帰宅した。

夕方、娘から連絡があり「彼を連れていく」とのこと。

エイミさんは「いつものごはんしかないけど、それでもよければ食べにくれば?」と返事をした。

夫も早く帰宅、4人で食卓を囲んだ。娘が彼に惚れきっているのが見てわかり、ほほえましさと同時にエイミさんには「複雑な感情」がわきおこってきたという。

 

「嫉妬なのかしら……。娘が大人になっていくのはわかりきっている。大人になれば恋人もひとりやふたりできるだろうし、そのうち結婚もするかもしれない。わかってるんです。それなのになぜか娘の若さがまぶしかった。娘が取られる寂しさというよりは、やはり女としての娘を見るのがイヤだったのかもしれません。正直な気持ちとして」

 

彼が帰ったあと、夫は「いい男じゃないか」と娘に言っていたが、エイミさんは頷きながらも心の底では賛同できなかった。

娘の恋人を遠ざける父親は多いが、エイミさんの夫は手放しで喜んでいたという。

 

「私がどことなく沈んでいるのを夫はわかっていたんだと思う。その晩、寝室で『いつか子どもは巣立っていくんだよ。別にまだ結婚すると決まったわけでもないし、娘のカレシくらい喜んで認めてやればいいじゃないか』と鷹揚なことを言っていました」

 

 

嫉妬の要因は彼だった

娘と彼の交際は順調そうだった。娘もさすがに朝帰りは控えるようになり、エイミさんの気持ちも落ち着いた。1ヶ月ほどたったとき、大学にいる娘から連絡があった。

「彼、今日はバイトが休みだからまたごはん食べさせてくれる? 私も早めに帰るから」。

どうせなら、おいしいものでも食べさせるか、とエイミさんはすき焼きを用意した。

夕方、「早く着いちゃったんですけど、いいですか」と彼が現れた。手にケーキを持っている。

「そんな気を遣わないで」と言うと、「いや、エビで鯛を釣るようなもので」とはにかむ。その顔がかわいかった。

その後、空が一気に暗くなり、いきなりのゲリラ豪雨。

雷が苦手なエイミさんは台所で震え上がっていた。

コーヒーを飲み終わったダイキさんがカップをもってキッチンにやってくる。

「どうしたんですか、おかあさん」

その瞬間、大きな落雷の音。エイミさんは飛び上がり、ダイキさんに抱きついてしまった。

 

「とにかく怖かったんですよ。彼は私をぎゅっと抱きしめてくれて。そのときわかったんです。私はマリの親離れを心配していたわけじゃない、娘がこんないい男に抱かれていることに嫉妬していたんです。抱きしめられて脱力した私の唇に、彼の唇が重なりました」

 

誘惑したのではない。

本当に雷が怖いのだとエイミさんは何度も言った。

だが、結果としてそれはダイキさんと刺激することになってしまう。

 

「そのままふたりでキッチンの床に倒れ込んで……。ダイキが私の胸を開き、しゃぶりついてきました。外は豪雨と雷、家の中ではすごい勢いで彼と私がひとつになっていた」

 

どのくらい時間がたったかわからない。ダイキさんの体の重みで、エイミさんは我に返った。

 

「早くシャワーを浴びてと指示、私も入れ代わりにシャワーを浴びて身支度を整えて。『ひどい雨だったよねー』と言いながら娘が帰ってきたときは、私はキッチンで夕食の支度をし、ダイキはリビングで大学のテキストを開いていました」

 

なにごともなかったように3人で食卓を囲む。

少し遅れて夫も帰宅。ダイキさんがもってきてくれたケーキもみんなで食べた。

 

「ダイキは本当に態度がいつもと変わらなかった。この子は案外、肝が座っているのかそれともずる賢いのかと考えてしまうほどでした。私はどこかびくびくしていたから、娘に『おかあさん、どうしたの? 具合悪いの?』と心配されてしまいました」

 

こういうときは、なにごともなかったかのように振る舞うしかないのだ。それを若いダイキさんはわかっていた。

数日後、ダイキさんから連絡があった。先日はごめんなさいと殊勝らしい言葉のあとに、「風邪なのか高熱で動けない」というメールだった。

 

「心配になって彼のアパートに行ってみることにしました。果物を買って部屋に行ってみると彼はベッドでうなされていた。確かに高熱でした。医者には行きたくないというので額を冷やしてあげて。でも若いんですね、数時間で熱は下がり、顔色もよくなりました」

 

おかゆを作り、帰ろうとすると彼が腕をとって引き寄せた。ダメよと手を振り払おうとしたが、彼のほうが力が強い。あっけなく抱き寄せられる。

 

「お願い、やめて。娘に知られたらどうするのと私は必死に言いました。するとダイキは『もうマリちゃんとはつきあえない。僕が好きなのはあなたなんだ、エイミさん』って。年の差を考えなさいと言ったけど、彼はそんなの関係ない、とむしゃぶりついてくる。強い力にはかなわないんです」

 

かなわないと言いながら、無理強いではなかったことはエイミさんのとろけるような目を見ればわかる。

ふたりは恋に落ちてしまったのだ。

まるで映画のようだが事実である。

「あなたの体も心も僕のものにしたい、と。夫にも娘にも裏切りになるのだからダメと言いながら、私も燃えてしまって……。最低です、私」

 

それ以来、エイミさんはときどき彼と会っている。

娘のマリさんと彼は、前ほど頻繁には会っていないようだ。

それでも彼の就職が決まったときは、娘が彼を自宅に招いた。

 

「彼は娘が気づかないほど徐々に距離を置こうとしている。一方で、自分が就職したら離婚して一緒になってほしいと言い出して……。就職すれば気持ちは変わると思うんですが、彼が無謀なことをしないように、私も距離を置かなければ。ただ、今は体が彼に引きずられているんです。若くて力強いセックスの虜になっていて……」

 

家庭が壊れないうちに手を引いたほうがいい。そう言いかけて私は口をつぐんだ。

そんなふうに言う立場にはないからだ。ただ、正直いってもう少し危機感をもったほうがいいのは確かではないだろうか。

(了)

 

イラスト:アイバカヨ

 

 

 

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

亀山 早苗

1960年東京生まれ。明治大学文学部卒業。フリーライターとして、女性の生き方を中心に恋愛、結婚、性の問題に取り組む。『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『不倫の恋の決断』『妻と恋人』『渇望』『オンナを降りない女たち、オトコを降りるオトコたち』など、不倫や婚外恋愛に関する著書多数。『渇いた夜』、『愛より甘く、せつなく』などの小説作品やノンフィクション作品も手がける。

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