満開の桜が風に揺れる東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで、2018年3月26日に「人生100年時代の社会人基礎力シンポジウム」が開催されました。
主催は経済産業省、テーマは「人生100年時代」のキャリア像についてです。
今回のシンポジウムでは、7名の有識者によるパネルディスカッション「私が考える社会人基礎力」が設けられ、幅広い年代が参加するなか活発な意見が交わされました。
国内産業の成熟化、経済成長の停滞、従来の年功序列制からの働き方改革、年金受給年齢の引き上げなど、日本の労働環境は変化の真っただ中にあります。
さらに、定年の引き上げや平均寿命・健康寿命の上昇によって、私たちのライフステージはより多彩に、より長期化する見通しです。
つまり、生涯における労働時間いわば「職業寿命」も伸びる見通しといえます。
それでは、私たちの「職業寿命」を長く健康的なものにするために、どんなキャリアデザインを描くのがよいのでしょうか。
そのヒントを探るべく、パネルディスカッションに耳を傾けてきました。
まずは、法政大学名誉教授の諏訪康雄氏による基調講演。諏訪氏は、これからのキャリアデザインには「アクション(踏み出す力)」「シンキング(考え抜く力)」「チームワーク」の3つの要素が重要であると提唱します。
また、人々は客観と主観の重なる部分でキャリアを描こうとする、その上で人々はキャリアオーナーシップを持つこと、自身のキャリアを主体的に意識し、工夫しながら個人の能力を伸ばすこと、個人と組織がコラボレーションすることの重要性を語ってくださいました。
新たに起業する人のうち、3分の1は60代以上であるというデータに触れながら、80歳になっても社会から必要とされるための能力が「社会人基礎力」であり、「社会人基礎力は死ぬまで必要」という諏訪氏の言葉は、これからの時代を生きる私たちの胸に強く響きます。
続いてはいよいよパネルディスカッションへ。
司会は西村創一朗氏(HARES CEO、副業研究家)、パネリストは、伊藤禎則氏(経済産業省産業人材政策室参事官)、島田由香氏(ユニリーバ・ジャパン取締役人事総務本部長)、嶋本達嗣氏(博報堂 生活者アカデミー主宰)、ヒカル氏(YouTuber)、船橋力氏(トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター)、米田瑛紀氏(エッセンス代表取締役)の面々です。
それぞれのパネリストが思う「社会人基礎力」はどんなものでしょう。
パネルディスカッションテーマ:「私が考える社会人基礎力」とそのために必要なアクション
~伊藤禎則氏(経済産業省産業人材政策室参事官)~
私は経済産業省で人材政策事業に携わっていますが、働き方改革を耳にしない日はありません。
これからは長時間労働の是正・労働者の選択肢確保・キャリアデザインという変化が起こりえます。
これから到来するのは、働くことと学ぶことが混然一体の時代。
経済産業省ではそんな時代を「一億総学び」と捉え、大人が体験により、何を学び、どう学ぶか、学んだものをどこで使うかが重要であると呼びかけていきます。
「Learn how to learn(学び続ける)」の姿勢をみなさんに意識していただきたいのです。
ロールモデルはすでに変わってきており、副業や海外就業、インターン、プロボラ(プロフェッショナルとしてのボランティア)が注目されています。
そこには学びの機会が多くあるのです。
人が充分学ぶために、失敗を許容する社会も大切です。
そういった社会のなかで、体験により学ぶこと、人的ネットワークを広げること、自分の核を持つことを続けていってほしいです。
自分自身のOSをフリーズさせず、変化し続けましょう。
~島田由香氏(ユニリーバ・ジャパン取締役人事総務本部長)~
2006年に提唱され始めた「社会人基礎力」ですが、もっと若い人、幅広い人に広まってほしい考え方ですね。
「社会人基礎力」ですが、12の能力を要素として分類し提唱しています。
しかしその一つひとつを身に付けようとしなくても大丈夫。
学びを体験することが学びです。また、仕事は決して一人ではできません。
連携することで紡がれます。
信頼はとても大切ですし、人間は誰しも「人とつながっていたい」「承認されたい」「貢献したい」という3つのニーズを持っています。
そして体験したら、「Refrection(振り返る)」しましょう。
つまり自分の中で考えてみてください。
反省ではありません、内省です。
体験したことを深めていきましょう。
そして、スキルを身に付ける「Doing」と、自分がどう在るか「Being」の両方が大切。
卑下することは、自分に対して失礼ですよ。
私は「一億総ワクワク」でみなさんが好きなことをしていく社会が素敵だと思います。
みなさん、ワクワクすること、好きなことをシェアしていきましょう!
~嶋本達嗣氏(博報堂 生活者アカデミー主宰)~
僕は博報堂で働きはじめて約35年になりますが、55歳の時に夢が叶いました。
それは「学校をつくりたい」という夢でした。
いろいろとチャンスを狙っていてようやくのことで、「博報堂生活者アカデミー」という社会人学校を作ることができました。
発想力やクリエイティビティを学ぶ学校です。
そんな僕が博報堂の会社員としてどんな社会人基礎力が必要だと考えているかというと、「生活者発想」という視点だと考えます。
時代を洞察し、課題を抽出し、未来への想いを発することです。
みなさんの中には「想い」がありますか?
どんな明日を創りたいですか?
ライフスケープ、暮らしの光景はどんなものを描きますか?
僕は個人的に、もっと男に色気のある社会になってほしいですね(笑)。
こういうことが大事な基礎力なのではないでしょうか。
「想い」にリソースを掛け合わせると、モノやサービスを創造する営みに繋がります。
「想い」を鍛え続けることが大事ですね。
~ヒカル氏(YyouTuber)~
「社会人基礎力」を考えるにあたり、就職について本気で考えてみませんか。
僕は就職するということは会社に心臓を捧げるくらい大きなことだと思います。
衣食住をはじめとするライフスタイルの大部分が就職によって変わります。
入社する前にきちんと考えないと、会社に飼い殺されてしまう人が出てきてしまうのではないでしょうか。
僕が就職する前、高校生だった頃のこと。
希望が見えない日々でしたし、未来を語る機会も少なかった。
だからこそ今、かつての自分が欲しかったサービスを提供する仕事をしています。
僕は仕事が楽しいです。
適度な難易度で、自分がレベルアップしていくことを実感しています。
考えることを放棄しないでほしいですね。
角度を変えて、ものごとを見てください。
盲点だと思っていたところに、今までになかった発見があるのではないでしょうか。
僕はまだ若く、この場にいることを場違いに感じていますが、同時に「根拠のない自信」を持っていま話しています!
妄想でもいい。
自分を褒めたい。
それがイメトレになり、自分で自分を認めることに繋がり、いつの間にか勝ち癖が身に付きますから!
~船橋力氏(トビタテ!留学JAPAN プロジェクトディレクター)~
僕は成績・英語力不問の留学サービスを提供しています。
今回「社会人基礎力」を考えるにあたり、企業にとって必要なものという視点ではなく、これからの時代やこれからの日本人にとって必要な「社会人基礎力」とは何かという視点で考えていきたいと思います。
コレクティブ・ジーニアスという言葉を知っていますか?
コレクティブは集合体という意味です。
一人ひとり違う個性や専門性を持った人たちが集まること、そこからイノベーションが起きる時代が来ると考えています。
これからの時代は変化の激しいものになります。
そのうえで必要な能力は「パッション、好奇心、独自性」の3つです。
没頭・没入体験と振り返りは、成功体験を分析するとキーワードとしてよく出てくる要素です。
留学は「気づき」を体験できるツールであり、ワクワクしながら学ぶことができますね。
「社会人基礎力」は12の要素に能力を分類しましたが、身に付けられなかったからといってダメではありません。
「社会人基礎力」は、加点方式で考えていきましょう。
~米田瑛紀氏(エッセンス代表取締役)~
人生100年時代では、75歳になってもワクワクしながら働ける環境がいいと考えます。
僕は「一億総プロ活躍」という言葉を発信していきたいですね。
たとえ肩書がなくなっても、会社に依存せずに生きていける力が必要です。
自分自身に価値を付け、自信を持つこと。
そのためには経験が必要です。
日本社会にはまだまだ終身雇用の意識が強く残っていますが、心が折れてしまったり、ワクワクすることなく同じ会社で働き続ける状況はなかなか辛いものだと思います。
僕の会社で提供しているサービスはプロフェッショナルのシェアリングです。
会社に在籍しながら、転職をせずに他者で働く機会を提供しています。
「業務経験×社会体験」です。
つまり他流試合で経験を積む、そうしてプロ人材として自分を磨きます。
「一億総プロ活躍」の意識を持ち、自信を身に付けていってほしいと思います。
~西村創一朗氏(HARES CEO、副業研究家)~
僕は人生を100年かけて行う自由研究だと捉えています。
テーマが見つかっていないことは決してネガティブなことではありません。
今回のシンポジウムなどで得たヒントから、みなさんそれぞれのテーマを見つけていきましょう。
未来を描くのは自分自身。
キャンバスに向かうあなたは、ワクワクしていますか?
描きたい想いを持っていますか?
そして満足できる未来を迎えるためには、「社会人基礎力」を身に付けること、つまり学び続けることが重要です。
未来のために、自分のために、「学び」の楽しさに目覚めてみませんか?
取材・文:鈴木舞
編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を楽しむ、
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