人生100年時代を楽しむ、大人の生き方 Magazine

目指すは100歳! 幸せな人生のために可能性は信じるもの、夢は実現させるもの。假屋崎省吾 氏 インタビュー【第3回】

 

華道家として第一線を走る假屋崎省吾氏ですが、その活動の幅は世界を股にかけて広がりをみせています。

それは経営者としての見事な手腕があってこそ。

変化の目まぐるしい現代において、流行に振り回されずに成果を出す假屋崎さんのマネージメント力に着目しながら、次世代のために取り組んでいる社会活動についてもお話を伺います。

自分の幸せを追い求めつつ視野を広く持って世界を渡る假屋崎さんの、人生100年時代を有意義にする生き方とはどんなものなのでしょう。

 

──第一線で活躍する芸術家にして、マネージメントを自分で行う敏腕経営者でもありますね。

利益を出し続けるために、假屋崎さんはどういったことに力を注いでいるのでしょう。

 

センスと時代を見極める!

時代が何を欲しているか、常にアンテナを張り巡らせています。

たとえばサイン会に来てくださった方と握手をしながら二言三言言葉を交わします。そこから見えてくるものがあるんです。

日常生活を送りながら世の中の動きを把握しようと意識もしていますね。

靴を履き、土を踏み、街を歩いてみる。スーパーへ買い物に行くのもいいし、犬の散歩の道すがら得るものだってあります。

「野菜が急に高くなった!?」なんてことを肌で感じたりすると、流行り物もなんとなくわかってきます。

現代人は旅行したり美味しいものを食べたりすることを求めるけれど、中年以上の年代の方々が日常に飢えているように感じます。

そういった時代が欲しているものに的確に応える人っていますよね。

大阪に平田進也(「浪花のカリスマ添乗員」の呼び名を持つ西日本で活躍する添乗員)さんという添乗員の方がいらっしゃるでしょう。

彼が組んだツアーは大人気だそうです。

最近は平田さんに弟子入りしたい!とも考えてしまうほど(笑)あのノウハウを仕事につなげることができないかと、いつも思案しているんです。

 

 

──華道以外の業界の動向にも敏感ですね。今、假屋崎さんが手掛けている事業というと?

 

着物のデザインとプロデュースをおこなっていて、ブランド「假屋崎省吾きものの世界」は、おかげさまで八周年を迎え業績が好調です。

最初は若い女性向けの振袖からスタートしました。

すると、お母さまやおばあさまをスポンサーとして、若い方も着物を買ってくれるんです。

そこからお母さま方など上の世代に、訪問着や付け下げ、小紋に帯、婚礼のお着物を提供させていただくようになりました。

大事にしているのは、お客さまの目線に立つこと。

お見立て会が地方であると、お客さまと接しながら「この帯が似合いますよ」と提案してみます。

そうしてコミュニケーションをとっていると、相手が何を求めているかわかってきます。

今の着物業界は大変ですけれど、私のブランドだけではなく業界全体が盛り上がるように、業者さんと日々努力しています。

日頃からほかのブランドさんのことを勉強したり、コラボレーションさせていただいたりと。

お見立て会では、別のブランドの商品をおすすめすることもよくあります。

なぜなら、自分のブランドでなくとも素敵なお品は沢山あるんです。

私は嘘を言いたくありません。

本当に似合うものをおすすめしていると、お客さまに選んでいただけるんです。

 

──売り買いも人間関係ですし、信頼がwin-winの関係を育むのでしょうね。男性向けはいかがですか?

 

男性向けはまだまだ……。

メンズは大変なんです。

浴衣も手掛けたいとは思っていますが、これからですね。

着物だけでなく、ほかにもいろいろデザイン・プロデュースしているんです。

スカーフでは日本最大のブランド「MOONBAT」さんと一緒にお仕事をさせていただいています。

「フルリール ラ ヴィ」というブランドで、秋の新作を出しています。

よくデザインチームとどんなものを世に送り出そうか!と考えを練っていますね。

すべてを自分ひとりでなんてできませんから、チームと一緒になって「こんな風にしたい」というアイデア出しをすると、素敵なものをあげてくれる。

そこからまたアドバイスを出して、完成に向かって一緒に進んでいきます。

また、昔から続けているのはガラス製品。

お花をいけるガラスの花器作りがきっかけで、世界的なガラスメーカーのDaumさんにご依頼をいただき、世界限定クリスタル花器のデザインを手掛けました。

古くはピカソやダリにもデザインされたメーカーです。

そういうご縁で、假屋崎省吾のガラスの器が世界で販売されているのはうれしいことですね。

あとはジュエリーも手掛けていますし、目新しいのは棺や骨壺のデザインですね。

「花筐(はながたみ)」というブランドで展開している棺のデザインのお仕事は三~四年が経ちますが、やりがいがあります。

 

 

──お仕事が幅広い! それだけ假屋崎さんにお声がかかっているということでもありますね。

 

花をモティーフにしてデザインが広がっていきます。

生の花に限らず、アーティフィシャルフラワーも素敵で、デザインをやらせてもらっているんです。

TV通販のショップチャンネルでは8月7日の「花の日」にアーティフィシャルフラワーを紹介していますが、かなり好評をいただいています。

ものごとは派生していきます。

たとえば酪農家の田中義剛さんは生キャラメルでブームを巻き起こしましたが、今はお肉やチーズの製造販売でも結果を出して実業家として成功されています。

私は、デザインすることが大好きなんです。

時代も私のデザインを求めてくれているので、とてもありがたいと思っています。

かといって今をピークにしてこれから廃れてしまうと困りますので、どうすればより良いものを創りだせるか?もっと皆さまに満足してもらうには?そんなことばかり考えています。

 

──ひとつひとつのプロジェクトに全力投球していらっしゃいますが、ほぼお一人でマネージメントをしているのですか?

 

いえ! 縁の下の力持ちのような存在がいてくれるおかげ。

材料の発注や製作部隊など、チームワークで成り立っています。

ただし、假屋崎省吾という名前を指してお仕事を依頼していただくからには、私がきちんと仕事しないと。

デザインのお仕事もあります、個展も開催します、花の教室はもちろん、テレビや講演会もあります。

還暦の60周年を記念して本の出版も控えています。

もう本当に時間が足りないです!

 

 

──充実していらっしゃる! 仕事が假屋崎さんを待っているんですね。

 

ありがたいことです! 幅広いお仕事のご依頼をいただき、もちろんアーティストとしての表現もさせていただいています。

だけど、お休みも大事です。

仕事のスケジュールをやりくりしながら、必ず海外旅行に行っています。

ポン、と日常から抜け出すんです。

海外に行くと気楽なもので、カフェでくつろいでいても誰も私が“假屋崎省吾”だということを知らない。

観光客の方に気づかれることはありますけどね。

ただし海外でも着物と花のコラボレーションを発表して「日本の文化は素晴らしいんですよ」ということを世界に知ってもらう活動をしています。

時間をとられてしまいますけれど、有意義なことだからやり続けないと!

また、桂由美先生(ブライダルファッションデザイナー。日本初のブライダル専門店を開いた第一人者)と少子化問題にも取り組んでいます。

恋人の聖地という出会いの場を設けて、カップルにゴールインしてもらうんです。

少子化に歯止めをかけられたら、と思っています。

次世代に向けては、花を通した心の教育「花育」を始めました。

花の教育はまだ社会に浸透していませんので、小学校、中学校、高校に出向いてお花をいけて、子供たちにお花のことを知ってもらう活動です。

ほとんどボランティアみたいなものですけど、社会貢献をしていきたいと思っているんです。

 

 

──アートにビジネスに、社会活動、プライベートも楽しんで……、人生を歩んでいくバランス感覚がすごい!

 

いえ、欠けているところだらけだと思っています。

運動神経はまるでなし! 車の運転もできないですし…

でも、愛犬たちと遊んだりピアノを弾いていると、すごく幸せ。

料理もストレス解消になります。海外ドラマを観て現実逃避するのもいいですね。

ラブリーな物語から立身出世をドラマティックに描いていたり、ファミリーものも面白いですね。

もっともっとやってみたいことはあるんです。

ピアノの腕を上げたいですし、英会話ができるようにもなりたい、料理学校にも行きたい。

そこから調理師免許を取ったら、将来は小料理屋でも開いたり!?(笑)

本当、時間がいくらあっても足りないですね。

私は長生きしたいんです。100歳は越えたい。

それまであと40年! あれもしたい、これもしたい。

日々、やりたいこと同士がせめぎ合って大変です(笑)。

 

 

──まさに人生100年時代! 目標であるこれからの40年をどのように描いていますか?

 

もう少し仕事を効率的に進めていきたいですね。

軽井沢に別荘を建てようとしていますが、設計のための時間が確保できていないんです。

こうしたい、ああしたいという想いだけが膨れちゃって、現実が伴わない状態です。

軽井沢が大好きなんです。

母が長野県出身だったということもありますし、緑が豊かで東京とは空気感がまるで違います。

東京の私は妖怪?みたいな暮らしをしているけれど(笑)、軽井沢では人間らしい暮らしができると思うんです。

別荘についてもっと時間をとって考えたいのに、全然捗らない。

理想の千分の一くらいの内容でしか今のところ考えられていないんです…(汗)

 

──忙しそうですが、それが辛さとなって自身を苦しめていないのが素敵です。

豊かな生き方はご両親からの影響が大きいようですが、働き方も何か受け継いだものはありますか?

 

父は真面目一本な公務員。

心づけのようなものはすべて送り返す父の姿を見て育ちました。

冠婚葬祭があればお世話になった人に尽くしていたので、その分信頼されていたようです。

母は専業主婦。美味しいものや美しいものはみんなで分かち合う人でした。

いい食材は山のように買ってきて、家で食べきれなくなったら近所の人に振る舞っちゃうんです。

そういうごく普通の、とても慈愛に満ちた家庭でした。

特別裕福な家でもなければ、伝統文化のバックボーンがあったわけでもありません。

けれど私が若い頃に父が亡くなり、十年後には母も他界。

妹がいますけれど、すでに家庭を持っていましたから、私はひとりになってしまいました。

 

 

──ひとりになったことは假屋崎さんにとって大きなターニングポイントだったのですね。

 

そういう側面もあったでしょうね。

自分でしっかりやっていかなきゃいけなかった。

先見の明を持ち、時流に乗り、自分で進んでいく人生の始まりです。

「男の子なんだから男の子らしく」というのもさほど気にしなくてよい人生ですね。

時代的にまだ難しかったかもしれないけれど、テレビのバラエティー番組に出演させていただいてからはカミングアウトする方が楽になりました。

 

──好きなものを自覚し、集中して挑戦し続ける。

假屋崎さんの強さはそんなところにあるような気がします。

 

私、集中力がすごくあるんです。

熱しやすくて“冷めにくい”。

本当はあんまりアレもコレもと手を出さない方がいいんでしょうけど、やっちゃってますね(笑)。

その代わりと言ってはなんだけど、余計なものには関わらない!

だけど昔は優柔不断でした。

迷って迷ってなかなか決められない性格。

引っ込み思案でしたし、それが今は随分変わりました。

ひとりになったことがきっかけでしょうか……。

ひとりと言っても、家族はそばにいてくれるんです。

パートナーとはもう十何年にもなります。

それから犬や猫、仲良くしている友人など、血のつながりはないけれどファミリーなんです。

こういうのって、いろいろなかたちがあっていいんじゃないでしょうか。

 

 

──時代とともに、人と人とが結ぶかたちも変わりますね。

そんな中、假屋崎さんが大切にしていることを教えていただけますか。

 

生きていくうえで誰かのために尽くすということは大切です。

一緒に働くチームや支えてくれる家族の存在、お客さんもそうですね。

それから夢。

自分が描いている夢を少しずつでもいい、実現していきましょう。

棺に入ったときに後悔したくないですよね? 『アレをしておけばよかった、コレもやりたかったのに』というのは情けないですね。

おちおち成仏できやしないってものです。

悔いることが起きようが落ち込むような目に遭おうが、それらをプラスに転化して『生きていてよかった。生きるって楽しい!』と思える精神構造を持ち続けたいですね。

マイナスなことがあったら同じことを繰り返さないようにするとか、前だけを見て進んでいくんです。

私は昔も今もいろいろなことに挑戦してきました。

何かをやり終わったらそれは過去のことになるんです。

未来ではもっと違う表現を、よりみんなが喜んでくれることを目指して前へ前へ!

「自分には何かできることがある」という可能性を信じて進んでいきましょう!未来に。

 

勇気をもらえる言葉で締めくくられた假屋崎省吾さんへのインタビュー。

現代社会に生きていると、なんだか言いようのない不安を感じたりしてアレコレ考えてしまいがちです。

しかし思考は決して悪いことではありません。

プラスをマイナスへ、プラスをもっと大きなプラスへ変えていき、楽しい未来を実現していきませんか?

 

写真:田形千紘     文:鈴木舞

 

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

假屋崎 省吾

華道家。Kariyazaki Flower Professional Education School主宰。美輪明宏氏より「美をつむぎ出す手を持つ人」と評され、繊細かつ大胆な作風と独特の色彩感覚には定評がある。日本はもとより世界各地で日本伝統文化の「華道」を広める活動にも精励する。
クリントン元米大統領来日時や、天皇陛下御在位10年記念式典・花の総合プロデュース、能・狂言や舞台美術などを多数手掛ける。

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