人生100年時代を楽しむ、大人の生き方 Magazine

我々はどのように進化してきたか?パタゴニア南部で恐竜時代の地層から、哺乳類の化石が見つかる!

 

独立行政法人国立科学博物館は、 アルゼンチン自然科学博物館との共同調査を行っている。

ゼンチン共和国サンタクルーズ州エル・カラファテ市の南に分布する約7000万年前の白亜紀末の地層から、恐竜類と共存していた小さな哺乳類化石を発見した。

 恐竜類と共存していた小さな哺乳類化石を発見したのは初めてのこと。

今回の発見はThe Science of Natureで公表された。

 

 

図1. 化石産地を示す地図。 Magallanodon baikashkenke の標本は、 赤い星で示された、 カンパニアン後期―マスチリヒチアン最初期に堆積したコリロ層の露頭から発見された。

 

 

本産地はパタゴニア地方における白亜紀の陸生化石産地としてはもっとも時代の新しいものであり、 白亜紀末の大量絶滅イベント直前の生態系の記録として貴重なものである。

このような学術的重要性から、 真鍋真・コレクションディレクターをリーダーとする国立科学博物館とアルゼンチン自然科学博物館による共同調査隊が直ちに組織され、 本年3月に現地調査が行われた。

その結果発見された、 ゴンドワナ獣類 Magallanodon baikashkenke の臼歯は、 アルゼンチンのパタゴニア地方南部の白亜紀末の地層からは初めてとなる哺乳類の化石の発見である。

本種はこれまで、 チリ共和国に分布する同様な年代の地層から報告されていたものであるが、 本種を含むゴンドワナ獣類は南半球において主に後期白亜紀に存在していた植物食の絶滅哺乳類であり、 その進化についてはいまだに謎に包まれている。

系統的には、 単孔類(現在のカモノハシなど)と有袋類(オポッサムやカンガルーなど)の中間に位置する原始的な哺乳類である。

今回発見された臼歯は長さ5 mm程度であることからも本種は非常に小型であったことがわかるが、 その小ささ故にこれらの哺乳類化石を見つけるのは通常非常に困難である 。

 

図2.  Magallanodon baikashkenke の第一臼歯状歯(標本番号MPM21572). 咬合面観(a), 歯根面観(b), 頬側面観 (c), 舌側面観 (d), 近心側面観 (e),遠心側面観(f)。 スケールは2 mm。

 

 

 

 

図3.Scotese (2014)に基づく後期白亜紀マストリヒチアン(約6800万年前)の古地理図上に示したゴンドワナ獣類の産出地。 星印1が今回の発見地。

 

現在のパタゴニア地方南部ではその厳しい冬季の気候条件で知られるが、 白亜紀末期はアンデス山脈が形成される前であり、 温帯気候下に森林や湖・潟が広がっており、 豊かな陸上生態系の礎を築いていた。

Magallanodon baikashkenke は、 恐竜に比べると遥かに小さい動物であるが、 この小ささ故に、 恐竜とは植物を食べる高さを分けることができ、 同じ生態系において共存することができたと考えられる。

本共同調査により採取された標本は、 サンタクルーズ州の誇る多様な化石記録の一部であり、 同州リオ・ガレゴス市にあるMuseo “Padre Molina”に登録・収蔵される。

 

公表論文の詳細

Chimento, N.R., Agnolin, F.L., Tsuihiji, T., Manabe, M. and Novas, F.E. 2020. New record of a Mesozoic gondwanatherian mammaliaform from Southern Patagonia. The Science of Nature 107, 49 (2020). 

 

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
人生100年時代を生きる、
大人のためのマガジンMOC(モック)
Moment Of Choice-MOC.STYLE

 

PROFILE

MOC 編集部

大人の生き方Magazine MOC(モック)編集部
芸術・イベント・自治体のニュースから厳選した情報のみをお届けします。

「好奇心が背中を押して、人類は宇宙へ飛び出していく」井田茂 氏が語る地球外生物…

惑星物理学者の井田茂教授にお話しを伺いながら、宇宙研究の最前線につ迫るインタビューも第3回目を迎えました。宇宙というと…

「地球中心主義を打破して、予測の向こうへトビラを開く」井田茂 氏が語る地球外生…

惑星物理学者の井田茂教授に、宇宙の不思議についてお話を伺うインタビュー第2回。今回は生命の定義とは何なのか、進化はどん…

「固定概念を崩して宇宙と向き合おう」井田茂 氏が語る、地球外生物最前線!人生1…

2017年、NASAによる2つの「重大発表」があったのをご存知でしょうか。一つは、地球のように海があってもおかしくない…

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため閉館中の国立科学博物館では、現在VR博物…

現在、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等を受け、閉館中の国立科学博物館。 標本収蔵庫に収蔵されている非公開…

大和力を世界へ! 現代アーティストの小松美羽が、 “神道と現代アートの融合”を…

アメリカ合衆国オハイオ州にある全米有数規模のクリーブランド美術館において、“現代アーティスト小松美羽"は、「神道展=D…