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小池一夫氏、映画を語る!「息をもつかせぬ展開と壮絶なビジュアル!ラストは圧巻!」【第3回 コンスタンティン】

 

漫画家にして劇作家などクリエイティブに活躍する小池一夫氏が、おススメの映像作品を紹介するコーナーも第三回目となりました。

人生で一度は見てほしい映画『コンスタンティン』評から始まり、物語製作におけるストーリーとキャラクターの設定についてなど、興味深いお話しを伺いました。

今回は、ネタバレ注意です!

 

悪魔払いのキャラクターが際立つ

『コンスタンティン』は圧巻のラスト

 

物語のラストに訪れるカタルシス

 

『コンスタンティン』は、最後のシーンがすごく面白い。

 

キアヌ・リーブス演じる悪魔払いのジョン・コンスタンティンは、地獄とこの世を行ったり来たりできる男です。

彼の弱みは、肺がんで余命が短いというところ。

 

悪魔払いだから、普通の人に取り憑いた悪魔、つまり魔王の子分を地獄に追い払うのが仕事。

悪魔を地獄に送り返されて、地獄の魔王はおもしろくない。

だから、ジョンの肺がんを喜んでる。

肺がんで死んだら地獄に連れて来てやると、その時を今か今かと待ち受けています。

 

とうとう最後の対決の日が来ます。

今度の悪魔は強くて、天使もジョンも歯が立たない。

でも、死にかけてる人間の女性を助けないと、もう命を落とす寸前です。

その時にジョンがとった行動。

それは、落ちているガラスの破片をとって、自分の両手首を切ることでした。

失血死しようとするんですね。

 

この行為は何かというと、自分を投げ打って他人を助ける行為。

そう、自己犠牲です。

神様は自己犠牲の精神が大好きなんです。

案の定、神はジョンを救います。

おかげで天使も女性も助かりました。

 

ジョンが死ぬのを待っていた魔王は、「やっとお前を地獄に連れて帰れる」と、機嫌よく死にかけてるジョンの元に現れます。

でも、そのジョンの姿を見て全てを悟るわけです。

自己犠牲が大好きな神が、ジョンを地獄に連れ去ることを許すはずがないとね。

魔王は神にたてつくことなんてできません。

 

激怒しながらも、魔王はジョンの身体に両手を突っ込み、中からドロドロした黒いものを取り出す。

肺がんを治して「今はお前を生かしてやる」と言うんですね。

悔しそうに。

そして、パッと消える。

 

意外な展開でありながら、すべて腑に落ちます。

ラストシーンがこういう風にピシッと決まっていると、スッキリ納得がいって「面白かった!」となりますよね。

 

 

「ひねり」が作品を面白くする

 

強い相手に正面切って勝負を挑んで負けた。

でも、まだ諦めない。

機転を利かせて、最後に自己犠牲という切り札を出す。

 

このアイディアが面白いでしょ。

作品の「ひねり」というんです。

 

力で負かすという普通の方法じゃないけど、結果は主人公の逆転勝利です。

敵である魔王が、主人公の肺がんを治してやらないといけなくなるというのが、また面白いですね。

 

「ひねり」のいい例は、たとえば『ターミネーター』。

映画のラストで、ターミネーターがめちゃめちゃに壊れた。

脅威は去りました。

そしたら、もう終わりでしょ。

観客も、あとはエンディングだと油断している。

 

ところが、ちぎれた手の先がね、残ってるんです。

その手の一部が映し出され、「あれっ」と思って見ていると、それが動き出すわけです。

そこで終わり。

 

面白いでしょ。

まだ続きがあるよと暗示しているわけだからね。

『ターミネーター』の場合は、それが次回作の予告の役割も果たすことになりました。

そういう「ひねり」のある映画っていうのは、すごく面白いですね。

 

 

小池流キャラクター考とは

 

年齢問わず新しいクリエイターたちのために、後進を育てるということをずっとやってきました。

主宰する塾と大学の教授としてね。

だけど、物語をつくるとき、みんなストーリーから入っちゃうんですよね。

「どんな物語を書こうかな」と。

それだと、大抵の場合、何も出てきません(笑)

 

「どういうキャラクターをつくろうかな」と考えたほうがいいんです。

何も奇想天外なキャラクターをつくれと言っているわけじゃない。

だけど、お話の中で「キャラクターを起たせる」ことは絶対に必要。

 

なかなか簡単にはわからないけどね。

いつも言うのは、一寸法師のお椀のこと。

「一寸法師はお椀の舟に乗っている」というのは誰でも知ってますよね。

お椀がなければ、一寸法師はただのチビでしょう。

一寸法師というキャラクターとして認知されてるのは、あのお椀があるからなんです。

お椀がキャラクターを起ててる。

 

同じように、かぐや姫は竹の中にいて、桃太郎は桃の中にいて、浦島太郎には玉手箱というアイテムがある。

あり得ないものを組み合わせてもいい。

とにかくキャラクターを立たせることが大事なんです。

 

手塚治虫の『鉄腕アトム』にしても、「スーパーバクーの空飛ぶヒーロー」というだけなら、同じようなキャラクターはいくらでもあります。

でも、アトムの場合は、その誕生からしてキャラクターを起っているんです。

息子を自動車事故で亡くした天馬博士は、悲しみのあまり息子とそっくりのロボットをつくる。

ところが、ロボットは人間のように成長しないということを思い知った博士は、サーカスに売ってしまう。

サーカスからアトムを救い出したお茶の水博士は、百万馬力を与えて空飛ぶ鉄腕アトムを誕生させた。

 

 

アトムは初めからヒーローのような強さをもっていたわけではないし、様々な苦悩を抱き続けるキャラクターなんです。

事故で死んだ子どもの身代わりとしてつくられ、その親に残酷にも捨てられてしまう。

その背景がアトムのストーリーを深めています。

もしアトムがただの怪力ロボットだったなら、『アストロ・ボーイ』としてアメリカにでヒットすることもなかったでしょう。

 

塾や大学でを何十年と教え続けてきて、高橋留美子(漫画家)や堀井雄二(ゲーム作家)など、数え切れないくらいたくさんの弟子ができました。

教えるといっても、僕がやってきたのは、近道に導くということ。

それぞれに才能があるから、いずれはデビューしていたでしょうからね。

デビューへの近道、それはストーリーよりもキャラクターを考えることなんです。

 

『コンスタンティン』(2005年)

監督 フランシス・ローレンス

主演 キアヌ・リーブス

 

正攻法では味わえない面白さ。

それを生み出す作品の妙が「ひねり」のよう。

そして映像作品を魅力的にするのはなんといってもキャラクターであるという。

長年、才能ある人間らを導いてきた小池氏による映像作品論、本編と一緒に楽しむには持ってこいだ。

 

写真:田形千紘  文:SAWA

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
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