本年開館30 周年を迎える横浜美術館では、 9 月21 日(土)より、 横浜開港160 周年をテーマに据えた二つの展覧会を同時開催。
1859 年の開港以降、 横浜港は貿易のみならず、 東西交流の窓口としてさまざまな文化を受け入れ、 発信してきた。
こうした風土のもと、 横浜美術館は1989 年の開館から現在まで、 国際的な港町、 横浜にふさわしい美術館として、 開港以降の新しい美術品の収集と紹介に力を注いできた歴史がある。
横浜美術館のコレクションを核とした二つの展覧会が、 現在につづく豊饒な、 生き生きとした歴史の出発点として、 「開港」を見つめなおす機会としたい考えだ。
横浜美術館コレクション展 「東西交流160 年の諸相」
2019 年9 月21 日(土)-2020 年1 月13 日(月・祝)
会場:コレクション展展示室
横浜開港160 周年をテーマとする二つの展示のうち、 一つは、 横浜美術館の収蔵品をご紹介する「横浜美術館コレクション展 東西交流160 年の諸相」。
幕末・明治期から第二次世界大戦後にいたる長い時間の中で生まれたさまざまな「東西交流」を、 いくつかのトピックを通して再考する。
開港期から第二次世界大戦後にいたる長い時間の中で、 どのような異文化の響き合いが実現したのか、 昨年度に収蔵したばかりのコレクションを含めつつ紹介。
「絵でたどるペリー来航」
2019 年9 月21 日(土)-11 月10 日(日)
会場:アートギャラリー1
もう一方の「絵でたどるペリー来航」は、 《ペルリ提督横浜上陸の図》に焦点を当てた、 エデュケーター(教育普及担当)の企画による展覧会。
異なるメディアの作品を通し、 ペリーの日本遠征をたどる
「絵でたどるペリー来航」展では、 石版画、 水彩画、 油彩画など、 さまざまなメディアで同じイメージを描いた作品群と『ペリー艦隊日本遠征記』の記述などの比較を通し、 ペリー日本遠征のイメージを多様な視点でみていきます。
横浜美術館開館30 周年記念/横浜開港160 周年記念
横浜美術館コレクション展 「東西交流160 年の諸相」
2019 年9 月21 日(土)-2020 年1 月13 日(月・祝)
会場 横浜美術館コレクション展展示室
今期のコレクション展では、 作品収集の大きな柱でもある「東西交流」を再考する。
開港をテーマにした展覧会の多くは、 幕末・明治期の洋風表現の受容と展開、 あるいはこの時期に来日した画家、 版画家、 写真家の活動に主眼を置いてきたが、 今回は時代を限定せず、 開港期から第二次世界大戦後にいたる長い時間の中で、 どのような異文化の響き合いが実現したのかを、 いくつかのトピックで紹介する。
同時開催中の企画展「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12 人の画家たち」の出品作の制作期とほぼ同時代にあたる、 第一次世界大戦後のパリで、 自身の表現を切り拓いていった藤田嗣治と長谷川潔。
同じ頃、 バウハウスを中心とするドイツの新しいデザイン理論を吸収し、 その成果を活かして宣伝誌『NIPPON』を発刊した名取洋之助。 多民族の共生と摩擦を抱えるアメリカ社会で、 日系人や日本人の美術家たちが残した足跡。
移動手段も情報メディアも一気に高速化した第二次世界大戦後には、 フランスの「アンフォルメル」と日本の「具体」のように、 一方的な影響関係ではなく、 問題意識を共有しながら波及していく動向も現れる。
他にも、 「木版画」をキーワードに、 浮世絵の伝統に連なる絵師として日本に生きたポール・ジャクレーや、 最新の日本版画を戦略的に海外に打ち出した吉田博の仕事をご覧いただくコーナーも設けました。 これら種々のトピックの間に、 新収蔵品を多数含めた「横浜浮世絵」や「明治写真」など、 開港期の特集展示を織り込む。
展示構成
序章 《パシフィック―シャタード・ブルー》
第1 章 藤田嗣治と長谷川潔のパリ
第2 章 ドイツのモダニズムと日本
第3 章 多民族アメリカの「日系」たち
第4 章 岡田謙三のユーゲニズム
第5 章 アンフォルメルと具体
第6 章 ネオダダ
第7 章 横浜浮世絵と輸出工芸
第8 章 下村観山の滞欧経験
第9 章 木版画の日本
第10 章 明治写真とニッポンの風景
開催概要
「絵でたどるペリー来航」
2019 年9 月21 日(土)-11 月10 日(日)
小さな横浜村にペリー艦隊の一行が上陸した場面《ペルリ提督横浜上陸の図》は、 横浜開港につながる歴史的瞬間を描いた作品として、 これまで横浜美術館のコレクション展においてもしばしば展示されてきた。
国際都市・横浜のはじまりの物語として、 開港160 周年を機に取り上げるにふさわしい作品。
本展では、 石版画、 水彩画、 油彩画という異なるメディアで同じイメージを描いた作品群と遠征記の記述などを比較し、 写真と絵画といった視覚メディアが、 どのように関連しあいながらペリーの日本遠征にかかる一連の記録画と記述を生み出していったかを検証する。
エデュケーター(教育普及担当)の企画した本展では、 当時の横浜に想像を巡らせていただくような工夫として、 さまざまな教育プログラムの実施や、 展示室でのボランティアによるトークなども開催。
1854 年3 月8 日の出来事が、 演劇の場面のように細密に描かれた《ペルリ提督横浜上陸の図》は、 ハイネが描いたとされている。
ハイネはペリーが率いるアメリカの東インド艦隊の随行画家であり、 描かれた図像はペリーの『日本遠征記』の挿絵として多数用いられている。
ハイネとともにエリファレット・ブラウン・ジュニアも画家・写真家として随行していたが、 当時の写真はダゲレオタイプ等であったため、 露光時間が長く、 上陸の瞬間を撮影することは不可能であったと考えられる。
ペリーが来航した当時、 絵画は記録メディアの中心にあり、 石版画は複製技術や出版文化と結びついて展開していた新しいメディアであった。
一方で、 1854 年3 月8 日を日本人はどのように目撃したのか?
さまざまな日本人によって描かれたペリー提督や乗組員たち、 ペリー艦隊の船の絵を対比的に展示する。
ここから当時の日本人の探究心や生き生きとした好奇心などを見て取ることができる。
展示構成
1. 1854 年3 月8 日/嘉永7 年2 月10 日―横浜上陸の図をめぐって―
2. 琉球、 旗山崎、 久里浜、 下田でのペリー艦隊
本展の特徴
《無款 黒船絵巻》(部分)19世紀後半(江戸時代末期)紙本着色 26.3×695.3cm 神奈川県立歴史博物館蔵 会期中巻替えあり
本展を企画した、 エデュケーターが担当する「横浜美術館教育プロジェクト」は、 鑑賞をはじめとする美術館体験が、 より豊かで多様となる機会の提供を目指し、 2012 年から始動した。
「教育プロジェクトチーム」が所管するボランティアは、 当館コレクションの学習活動を基礎に、 学校団体や一般来館者への鑑賞事業のサポートを行っている。
本展は、 2017 年度に「教育プロジェクト」が、 横浜市立中学校の美術科と社会科の教員たちと協働して行った「授業案づくりと授業実施」を起点にしたもの。
その折に制作した「《ペルリ提督横浜上陸の図》をめぐる授業案や鑑賞教材」を、 中学校の授業で活用していただけるよう、 学校教員への観覧も呼びかけている。
この展覧会は、 《ペルリ提督横浜上陸の図》を中心に展開する構成が特徴。
加えて展示室内でボランティアによるトーク「展覧会・ココがみどころ!」を、 会期中全44 回実施。
本作品のみに着目した内容で、 ボランティアそれぞれの視点を活かしたトークを実施する。
横浜美術館開館30 周年記念/横浜開港160 周年記念
横浜美術館コレクション展 「東西交流160 年の諸相」
【会期】2019 年9 月21 日(土)- 2020 年1 月13 日(月・祝)
【会場】横浜美術館 (〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
【開館時間】10:00~18:00
*金曜・土曜は20:00 まで(ただし、 9/27~28、 1/10~12 は21:00 まで)
*入館は閉館の30 分前まで
【休館日】木曜日(2019 年12 月26 日[木]は開館)
2019 年12 月28 日(土)~ 2020 年1 月2 日(木)
【観覧料】一般 500(400)円、 大学・高校生 300(240)円、 中学生 100(80)円
【問合せ】横浜美術館 TEL 045-221-0300
編集・構成 MOC(モック)編集部
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