人生100年時代を楽しむ、大人の生き方 Magazine

シニア労働力は企業にとってのメリット大! 自分の市場価値を知り、自信を持って働き方改革に進め!!

 

「中高年」「シニア」と聞いてどんな人物像をイメージしますか?

もしネガティブなものばかり頭に浮かんだとしたら、ぜひ意識改革をしましょう!

84歳にして人材紹介ベンチャー「CEAFOM」を経営し、多くの企業と人材を結び付けてきた郡山史郎氏に、中高年労働力についてお話を聞いてきました。

アラフィフ世代が人生100年時代で輝くために、どんな備えが必要なのでしょう。

戦中戦後、バブルを生きてきた郡山氏のビジネスマンスピリットが心に響くインタビューをどうぞ!

 

インタビュー第一回では、シニアを取り巻く労働市場、採用側である企業構造についてお話しを伺いました。

ところで、シニア自身の働く意識はどうでしょう。

定年を迎えたり、現場から遠く離れると「こんな仕事いやだ」「給料は下げたくない」と考える方が多いのではないですか?

 

以前はそういう方が比較的多かったように思えますが、変わってきましたね。

「給料が安くてもいい」「仕事が面白い会社を希望したい」と仰る方は増えています。

「俺は偉かったんだ。給料が高くないとイヤだ」「今までのようなポストにいたい」という人は減ってきました。

しかしこの点は個人差がありますので、また別の悩みです。

 

 

採用してもらうためには、自分のメリットをアピールしないといけません。

企業が中高年を雇用して得られるメリットというと?

 

ほとんどの中高年が、3つの特徴を持っています。

 

・安い

・休まない

・辞めない

 

安い、というのは生活コストが抑えられるということを意味します。

若い世代と比較して、シニアは生活がある意味安定しているんです。

ローンを返済し、子どもは自立した。

すると支出が減ってくる。

若い人は海外旅行やファッション、レジャーなどにお金を使う傾向にありますので、支出が高くなります。

だから若い世代は高い給料が必要なんです。

それが60歳を過ぎると減ってくる。

食べる量も減ってきます。

私はお酒の量が減らないのが困りものですが、安い酒で平気になります(笑)。

 

(笑)。

休まない、というのは?

 

ほかにやることがなくなってくるので、仕事を休む必要がなくなるんです。

若い頃と比べると参加したい行事や用事が減ってきます。

 

 

年齢とともに生活がシンプルになるんですね。

辞めないというのは?

 

その仕事を辞めても、次に働く場所がなかなかありませんからすぐには辞めません。

「安い、休まない、辞めない」は現代企業が求める人材像であり、中高年は見事にはまりますね。

その反対の人材は、会社にとって困る存在です。

 

企業が求める人物像とアラフィフはマッチしているんですね。

するとシニアはここで諦めず、人生をリセットして新たな自分を再発見していくイメージでしょうか。

 

新たな、ではないですね。

人生はひとつしかありません。

前半戦と後半戦があるということです。

前半戦の人生は社会の制度の中にあり、そこには競争がどうしてもついてきます。

学校や会社などあらゆる場で競争がありますね。

出世があるからこそ社会が進歩するという構造の影響は大きいです。まさに「競争の社会」でしょう。

しかし後半戦に突入すると、そこに拓けてくるのは「共存の社会」だと思いませんか?

 

人生のふたつのフィールド

前半戦:競争の社会

後半戦:共存の社会

 

頭を切り替えましょう。

前半戦で目いっぱい仕事をし、出世したりしなかったり、子どもを育てたり、それはそれでいいんです。

そこを終えた後半戦からは競争の世界ではありません。戦わなくていいんです。

しかしそうして始まった後半戦に、誰かがやらなくてはいけない仕事があるとしたら?

 

後半戦ならではの仕事があるということでしょうか?

 

はい。

あるんです。

そしてそういう仕事をできる人材が、中高年層にはたくさんいるんですよ。

たとえば野球選手でずっとレギュラーとして活躍してきた。

でも後半戦はグラウンド整備の仕事をしている。

それはとてもやりがいのある仕事なんですよ。

「なんだかグラウンドの整備がいまいちだぞ。俺がやろう!」そうして始めた仕事って、すごくいいですね。

やりがいがあって、少ない給料だとしても食べていける。

とても素晴らしい。

野球選手もグラウンド整備も、どちらも仕事としてはいいものです。

しかしグラウンド整備を軽んじてみる人は多いかもしれません。

競争の社会で生きてきた価値観による見方ですね。

競争の社会で生き抜いていくうちに「職業に対する偏見」というものが染みついてしまった。

そういう価値観や偏見をなくすようにしてみましょう。

 

後半戦は自分のために戦うものではなく、誰かと共に生きるための人生と考えてみると、意識が変わりそうです。

 

ええ。後半戦は競争の社会ではありません。

そうだとしても一体、誰と競争するというのでしょう?

頭を切り替える必要があります。

個人だけではなく、企業や社会も同様です。

後半戦を生き始めた人を十分に認める意識改革をしてください。

そして前半戦を一生懸命に生きている人を一緒に支えていきましょう。

すると前半戦を生きる人がもっと伸びていくんです。

 

 

認め、支え合うことで世代間のノウハウや情報が循環しそうです。

けっして前半と後半で隔たりがあるわけではないんですね。

 

サッカーでも前半戦と後半戦がありますよね。

人生がふたつあるのではなく、ひとつの人生が途中で切り替わるんですよ。

前半と後半とで、まったく違うことをしたとしていても、幸せになれると思いますよ。

前半戦の生き方にこだわる必要はありません。

 

郡山さん自身、前半戦と後半戦とで人生観は変わりましたか?

日本を代表する企業に入社し、かなりご活躍されたあと、今なお現役のビジネスマン! 一貫している印象があります。

 

私は運よくソニーに在籍し、それこそ海外を飛び回っていろいろな人に会うこともできました。

映画事業にも携わったので、女優さんなどとも。

 

とすると……コロンビア映画買収の頃の!

 

そうですね。

しかし、あの頃に「幸せ」を感じた瞬間があったかいうとと……、ないんですね。

 

 

えっ。

でもあれだけデカい仕事をしていたら、達成感も相当だったのでは?

 

ものすごいプレッシャーでした。

間違えたら大変だ、競争に負けたら大変だ。

いつも心配ばかりでね。競合がいて、獲るか獲られるか。

一度でも獲られてしまうとその後の数年間に響きますから。

けれど獲ったとしてもまたすぐ獲られる。そんな毎日でしたよ。

夜も眠れない、明日のことが心配でしょうがない、数字に気持ちが左右されて仕事が終わるとぐったり。

子どもの面倒もろくに見られず……。

 

戦い真っただ中の前半戦だったんですね。

後半戦に入ってからはいかがです?

 

毎晩の酒が楽しみですね(笑)。

そんなわけで、私の前半戦と後半戦、果たしてどちらが幸せなのか。

 

何が幸せか考えざるを得ないですね。

 

前半戦は言い訳がたつんです。

「人のため、会社のために尽くしているんだ」と。

後半戦は言い訳がたちません。

自分が幸せじゃなければ、つまらないですよ。

後半戦に幸せを感じられるということは、いいことだと思います。

前半戦は達成してもまたすぐ何かを始めなればいけませんでしょう。大変ですね。

 

過競争から離脱して、オンリーワンを追求していくというのも前半戦の生き方のひとつではありそうですが……。

 

それもまた大変ですね。

ただし後半戦もある意味で全員がオンリーワンです。

ある程度の範囲内を守れば、好きなことをしていても許されますから。

 

郡山さんは今年で84歳!

ますます精力的に働き続ける喜びとは?

 

抵抗しているわけです。

高齢化になると体力が低下しますが、そこにどう抗うか。

朝に起きて仕事場に辿り着くまでで結構疲れるんですよ。

でも到達すると「やったぜ」と何かに仕返ししたような気持ちになりますねぇ!

 

 

格好いいです。

 

一日が終わると、夕方にはくたびれてくる。

けれど「あぁよかった。ざまぁみやがれ。今日も一日やったぜ」と思う。

これをうま~く続けていき、高齢化そのものに抵抗していくことが喜びのひとつ。

毎日、満員電車に乗っていて思うことがあります。

「おそらく、この車両の中で俺が一番年上だ。

年寄りなんてと思われがちだけど、まだまだ働くぞ」

これが気持ちいいんですよ。

もうひとつは社会に対してですね。

「年寄りはどうせダメだろう」と思われているでしょうが、けっこう税金もたくさん払っていますよ(笑)。

ただしありとあらゆるものが増えてどうしようもないのがねぇ。

税金が増える、保険料も増える。

介護保険料なんてすごい金額。

でも介護されるつもりはないんです。

最期はね、キーボードにうつぶせになって死にたい。

 

ストイック!

いや~、参りましたね。

 

いいえ、ストイックではないんですよ。

負けず嫌い(笑)。

時代が戦中戦後でしたからね。

生き残ることに喜びを感じるのでしょうね。

戦争を境に社会の価値観がガラッと変わり、誰も信用できない時代で、修羅場どころではありませんでした。

でも、皆が負けるものか!では住みにくい世の中になりますね。

負けるものか、は自分に言い聞かせているので、外に出てはいけないと思います。

人に対しては、優しく、にこやかに。楽しませる。

それが傍樂ですから。

 

前半戦を生き抜いた先にある、後半戦は「共存の社会」が待っている。

一億総活躍時代と言われると肩に力が入ってしまいますが、なんだかふと楽になるキーワードでした。

84歳にして現役を走る郡山さんのビジネススピリットには感服するばかりですが、「負けるものか!」で働き方&生き方改革してみませんか?

 

写真:稲垣佑季 文:MOC編集部

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

郡山 史郎

一橋大学経済学部卒。伊藤忠商事入社。化学品部で営業担当。
ソニーに転職。欧州駐在員、米国駐在員,通算12年。現地販社の立ち上げを行う。米国シンガー社勤務8年。日本代表ほか六社の責任者。全社黒字経営。ソニーに復帰して、情報機器事業本部長。経営戦略本部長、一般地域統括本部長、資材本部長、物流本部長など歴任、常務取締役。
全社での年度最高業績の事業責任者に与えられる社長賞を4回受賞。映画会社のM&A担当。ソニーPCL社長、会長、リーディングエッジ社社長、歴任。いずれも好業績を残す。CEAFOM社創立。

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