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新型コロナ患者の避難場所はどこに?難民キャンプでの強制隔離による健康悪化を懸念

 

 

ギリシャ・レスボス島のモリア難民キャンプで、 初の新型コロナウイルス感染者が1人報告された。

ギリシャ政府はこれまで、 新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、 同キャンプ内の全ての移民と庇護希望者を強制的に隔離する方策を打ち出してきた。

国境なき医師団(MSF)は、 こうした集団隔離は住民の健康悪化につながる危険な策であり、 回避すべきだと訴えている。

 

 

必要なのは包括的な公衆衛生対応

レスボス島でMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるキャロライン・ウィレメンは、 「強制的な集団隔離を正当化する根拠はない。

キャンプ内は“密”であり、 ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の保持)をとることは不可能だ。

こまめな手洗いのための水や設備もありません。 こうした隔離措置は既に心のケアが必要な患者に、 さらなる悪影響を及ぼすことがわかっています」と警鐘を鳴らす。

モリア・キャンプは3000人を収容できるよう設計されたが、 現在約1万3000人が押し込められている。 MSFは、 今回の隔離措置はキャンプにおける感染拡大防止戦略の欠如を隠すためだと見ている。

最近、 レスボス島民(移民・難民以外の住民)の間で新型コロナウイルス感染者数は増加しているが、 モリア・キャンプで確認された症例は1件にとどまっている。

今ギリシャ政府に求められているのは、 包括的な公衆衛生対応に踏み切ることであり、 感染者との接触歴調査に加えて、 検査、 衛生状態の向上、 医療体制の改善だ。 感染拡大を名目にキャンプ住民を不衛生な環境に閉じ込めておくことではない。

 

 

ハイリスクな住民の退避が急務

モリアは誰にとっても安全な場所ではないが、 新型コロナウイルスに感染した場合、 高年齢や基礎疾患のため重症化リスクが高い人びとは200人を上回ると確認されている。

MSFやその他の援助関係者は数カ月間、 モリア・キャンプ住民を全員他の場所に退避させるように求めてきた。

特に、 レスボス島内にある安全な宿泊施設やギリシャ本土や他の欧州連合加盟国にある安全な宿泊施設に感染リスクが高い人びとを緊急に移すよう、 要請してきた。

4月にギリシャ政府は、 感染リスクが高い人びとをギリシャの諸島から避難させると約束したが、 それから5カ月経った現在も人びとは閉じ込められたままであり、 今度は警察による防疫線に阻まれてしまった。

ウィレメンは、 「キャンプには、 基礎疾患をもつ高齢者、 妊婦、 子どもたちがいて、 この政策による恐怖や不安で心の傷を負っている。

政府は、 本来であればこうした人びとを守る役目を負っているはずなのに、 逆に新型コロナウイルスと一緒にキャンプ内に閉じ込めて、 彼らを危険にさらしているのです」と憤る。

 

 

強制隔離の代案としてMSFが提唱する措置は以下のとおり。

 

今年7月末、 モリア・キャンプのすぐ近くに建てられたMSFの新型コロナウイルス感染症隔離センターは閉鎖に追い込まれた。

ギリシャ政府による都市計画規制に合致していない行為は非合法とみなされ、 地元当局が罰金を課すようになったためだ。

事態を受けて、 MSFはレスボス島での新型コロナウイルス対応を大幅に縮小せざるを得なくなった。

 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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