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枡野浩一のモヤモヤすっきり短歌 【第1回】

 

高校の国語教科書にも短歌が掲載されている歌人の枡野浩一さんを訪ね、南阿佐ヶ谷の仕事場「枡野書店」へ伺いました。

自身の短歌を胸にプリントしたTシャツを着こなし、「短歌をつくるときに大切なのは、いつまでもクヨクヨしつづける心」と力説する49歳。

そんな枡野さんがスタートさせる新連載は、題して「モヤモヤすっきり短歌」。

忙しい日々の中で、悩みと呼ぶほどは深刻ではないモヤモヤを、あなたも抱えていませんか?

 

ツイッターで34通のモヤモヤ話が届きました

初めまして。

新連載「モヤモヤすっきり短歌」は、悩み相談というほど大袈裟ではないものの、なんかモヤモヤするというエピソードをみなさんから寄せていただいて、それに枡野さんが短歌を捧げる、という企画です。

 

「初めまして。私が1999年に出した初エッセイ集『君の鳥は歌を歌える』(マガジンハウス)は小説や漫画や演劇などの人様の作品を文で紹介し、映画化ならぬ短歌化する、という試みでした」

 

珍しい試みですが、今回の企画にも似た精神がありますね。

 

はい。モヤモヤすっきり短歌は、エピソードを寄せてくださったみなさんの気持ちをすっきりさせることを目的に、エピソードをそのまま短歌化することもあるでしょうし、そのかたに捧げる短歌を改めて詠むということもあると思います。

どうぞよろしくお願いします

 

どうぞよろしくお願いします。

みなさんからは、どんなモヤモヤが寄せられましたか?

 

初回だったので、ツイッター(https://twitter.com/toiimasunomo/status/938394057654415361)で呼びかけただけだったんですが、34通ものモヤモヤ話が届きました。

けっこうヘヴィな内容のものが多かったです

 

ヘヴィ……たとえば?

 

「私の友達が自殺しました、という話とか。

その友達というのが構成作家で、私も仕事したことのあるかただったのですが、メールを読むまで亡くなったことすら知らなかったので、モヤモヤどころではありませんでした」

 

重いですね。

 

もっと他愛ないエピソードが届くと思っていたのですが、ほとんどが重い話でした。

子供が不登校になってしまった、というお母さんからメールが届いたかと思えば、学校に行けなくなってしまった、という高校生からもメールが届きました。

このお二人は親子ではありませんが、全国に大勢いるんだと思います、不登校者。

以下は、個人情報を伏せたメールの一部です。

改行など変えた箇所があります

 

子供が不登校になってしまってモヤモヤします

《今回枡野さんに聞いていただきたいもやもやは子供についての事です。

現在小学2年生なのですが、1年生の3学期頃から、不登校になりました。

私はフルタイムで仕事をしておりましたが、まだ6歳の子供を家に残したままにしておくこともできず、10年勤めた会社を退職。

現在は放課後登校、子供のカウンセリング──療育に付き合う毎日です。

カウンセリングの先生には、子供のペースで進めようと言われています。

ですが放課後学校に行き、担任の先生と話すと、「明日は休み時間に来てみようか」と子供に約束を取り付けてきます。

子供はおそらくその場では、行く気もあり先生との手前「わかった」と約束はしますが、やはりいけません。

そうなると約束を守らせない私の責任なんだろうか――――――と、大変にもやもやします。

そもそも子供のペースが正解なの?

でも、子供に任せていたら、学校に復帰できるかどうかもわからない。

けれど、無理やり連れていくと、クラスメイトの前でギャン泣きしてしまいます。

わが子のそんな姿を、クラスの子供たちにさらすのは、本当に忍びなく、できれば無理強いはしたくないです。

自分の事なら、今まで頑張ることで解決してきました。

もしくはうまく逃げてやり過ごしてきました。

でも人の事だから頑張りようがありません――――――

いじめなどではなさそうですが、原因もはっきりしないし、これからどうしたらいいのかもわからず、もやもやした毎日を過ごしています。》

(神奈川のただの主婦さん)

 

なるほど。大変そうですね。

 

「ご相談の中の、人の事だから頑張りようがありません、というところにリアリティを感じました。

どう努力したら改善するのか、正直わからないですよね。

続いて、不登校になっている当事者からのメールもご紹介します」

 

自分が不登校になってしまってモヤモヤします

《私は今現在高2の女子で、それなりの偏差値の私立高校に通っています。

その中でも何の因果か特別選抜クラスというのに所属しているのですが、私はそこまで能力が高くなく(むしろ低く)、受験に向けての周りやプレッシャーなどに上手く耐えることが出来ず、すぐに頭痛になってしまう毎日です。

そのせいでかなりの日数学校を休んでしまいました。

私のことを心配してくれる友人や、おこがましくも私に期待してくれている先生がいるのもわかっています。

ですが元気に毎日学校に行けませんしこのままでは留年という最悪の事態が訪れます。

そうはなりたくないのに自分の精神が弱いのか学校を休みがちで、そうすると親は私がやりたいことをやるということを許さず、「何故学校に行かないのか」と繰り返します。

理由は私にもわからないので答えられませんし、それでは親には怒られるし、やりたいことが出来ない以上テンションは低いままで、そして朝になると酷い頭痛になるという悪循環です。

このような個人的で重たい相談、さらに見も知らぬ者からというのは申し訳なく思うのですが、話を聞いて頂けるだけでも良いので文章にさせて頂きました。》

(今現在高2の女子さん)

 

これもまた大変そうです。
「というわけで、このお二人のモヤモヤへ、私なりの短歌を捧げますね。詠みます!」

 

 

写真:田形千尋  字と絵: 目黒雅也

 

▼歌人より一言

「私には今年18歳になる息子がいて、元妻の強い意志によって離婚してからずっと会えてないんですが、風の便りによると彼は高校に進学しなかったようなんです。

小さいころから学校生活に馴染めず、フリースクールみたいなところに通っていたらしい。

私自身、学校での集団生活が苦手だったので遺伝を感じずにいられません。

むしろ自分はよく不登校にならなかったなあと思うんです。

解決策は提示できませんが、みんなが学校に行かない時代が来たらいいのにと半分本気で思っているので、その気持ちをまっすぐ詠みました」

 

 

枡野浩一 YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/user/masunomasuno?sub_confirmation=1

ツイッター
https://twitter.com/toiimasunomo/status/962192211503820801

名刺
https://masunobooks.com/

新刊
https://www.akaneshobo.co.jp/search/info.php?isbn=9784251011039

 

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編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

枡野 浩一

枡野浩一(ますの・こういち)1968年東京うまれ。1997年『てのりくじら』(実業之日本社)他で歌人デビュー。短歌代表作が高校国語教科書(明治書院/大修館書店)に掲載中。短歌小説『ショートソング』(集英社文庫)は漫画化され、漫画版がアジア各国で翻訳されている。五反田団などの演劇出演を経て、44歳からの2年間、芸人事務所SMAに所属。【元相方たちは漫才コンビ「すっきりソング」として活躍していたがボケ担当が失踪。】『踊る!さんま御殿‼︎』で「踊る!ヒット賞」に選ばれたことがあるが、賞品はまだ受け取っていない。昨今は絵本を続けて刊行しており、イラストレーター目黒雅也との共著『しらとりくんはてんこうせい』(あかね書房)が発売中。

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