酒ジャーナリストが酒好きの医師に取材をした本『酒好き医師が教える最高の飲み方』は、酒飲み必読の一冊。
MOC編集部は著者である葉石かおり氏に、健康やメタボが気になるアラフィフにオススメの「お酒の嗜み方」を聞いてきました。
そのほか、世界へ向けて日本酒の魅力を伝える啓発活動、お酒で人生が豊かになる可能性など、お酒が持つパワーに気づかされるお話満載です。
東京だけでも星の数ほどお酒を飲める場所がありますが、地方だって負けていないなと思うんですよ。
葉石さんが思う地方の名店を是非教えてください!
地方もいいですよね。
お酒を楽しむために旅行に行く気持ちになったり、地域の活性化につながりますし。
前回、飲む前に糖質を摂っておくといいとお話しましたが、コレを実践できるお店が仙台にあるんですよ……!
「にほんしゅ屋 シマウマ酒店nico」というお店で、お通しにお粥が出てきます!
Photo:葉石かおり
「おっ、やるな!!」と思ったわけですね~!
お通しのお粥と一緒に本日のオススメのお酒が平盃に入って出てきました。
体を冷やさないよう常温というのもいいなあと。
平盃、いいですね!
口径が広い平盃で飲むと、口の中に空気が多く入るので、よりすっきり感じるという効果があります。
酒器選びも素晴らしいなあと。
お酒のラインナップ、つまみのグレードも非常に高かったです。
中華料理と日本酒を合わせるのが得意なお店で、豆苗炒めがものすごく絶品でした。
シンプルなのに美味しいんですよ。
パクチーと塩辛と新タマネギを和えたものがまたお酒に合って……。
Photo:葉石かおり
そういうお店を見つけると、喜びがまたひとしおなんだコレが。
ただし一緒に飲む人次第で、その日の満足感ってけっこう左右されちゃいますよね。
葉石さんはどんな人と飲むのが好きですか?
◎お酒のウンチクを語らない
◎お酒の飲み方をコントロールできる
◎箸の持ち方が綺麗
◎説教しない
◎タバコを吸わない
ウンチク語りが嫌なのは、「オレは知っている」ということを誇示するからですね。
ウンチク無しに、純粋にお酒や食事を楽しんでくれる人が好きです。
食べものを口に運ぶお箸の所作がキレイな人もやっぱり素敵。
それと、お酒の飲み方をコントロールしている人。
お水を飲みながらお酒を飲むなど、セルフコントロールしているのが見える人がすごく好きです。
「この人、意識高いな」と感じます。
特に日本酒はお水を飲むことで悪酔いを防げますから、お水を一緒に飲んでいただきたいです。
説教って、お互いが対等な関係であればそうそう出てこないものですよね。
なんで説教を始めちゃうんだろ。
相手をマウンティングしたいんでしょうね(笑)。
それが伝わってくるから、しんどくて帰りたくなっちゃう。
「これもアドバイスなんだ」と受け止めようとは思うのですが、度を超えると場の雰囲気が壊れるし、お酒がまずくなりますよね。
自分をコントロールしながら楽しむのが、すべての根底にある気がしてきました。
葉石さんは酒量や食事内容の管理が大切だと著書でも書いていますよね。
私はコントロールするのがもともと好きなほうですね。
食生活指導士の資格をとって、1日に必要な栄養素を点数化する方法を習得しました。
それからますます食材の成分を気にするようになったんですよ。
ですからスーパーなどで食品を見ていると、カロリーや添加物が書いてある部分を確認しちゃう。
添加物の多いものはむくむから極力避けたいですし、できるだけ質のよいものを選んでいます。
年齢を重ねると食が細くなるじゃないですか。
お酒もいいものが少しあれば十分になってきます。
若い頃は「飲む」だったのが、今は「味わう」とか「嗜む」のが楽しい。
嗜み方、教えてもらいたいです!
葉石さんはヨーロッパでもお仕事をされていますよね。
2015年に立ち上げた一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションで開催するサケ・アカデミーを通じて、日本酒の講義をしています。
現地のソムリエや和食レストランで働いている日本人の方の参加が多いですね。
日本酒の知識やペアリングをお伝えし、試験にパスした方にサケ・エキスパートの資格を授与するという内容です。
ヨーロッパで講義を始めてから、今年で丸3年になりました。
ヨーロッパではイタリアで開講していて、アジアだと中国、韓国、バンコク、そしてブラジルには提携校があります。
最近は海外での活動が増えてきましたね。
今後も世界に向けて日本の酒文化を伝えていきたいですね。
目標は「日本酒を国酒から、国際酒へ!」です。
国内でも講義はされていますか?
もちろんです!
講演やイベントなども開催します。
東京、茨城、秋田、仙台、福岡、広島などいろいろなところで開催していますよ。
日本酒造りの「今」を知ってもらうため、現役の酒ジャーナリストである私が見聞きし味わってきたものを情報として提供しているんです。
受講者は飲食店の方を筆頭に、日本酒に興味のある一般の方々が参加されています。
最近は年齢が少し高めの男性も。
65歳が最高齢の受講者です。
第二の人生を好きな日本酒で楽しみたいという方や、自分も講師になりたいという方など目的はさまざまです。
最近は女性の受講生がグッと増えてきました。
日本酒の「今」を伝えるのは、食文化から伝統などたくさんの分野をいい意味で巻き込んでいきそうですね。
日本酒蔵は国内でどのくらいあるのでしょう。
今は約1400です。
たくさんありますね!
講義はどんな内容ですか?
日本酒の文化、お酒造りの基礎、ペアリングなどを学びます。
日本酒がいかに丁寧に作られているかを知ることで、「日本酒への愛」が深くなり、ますます知識を深掘りしたくなります。
日本酒というツールを使って自分の人生が広がるのって、楽しいですね。
最近は人生100年と言われているでしょ。
50歳だったらやっと半分。
100年も生きるというと、「うわ、大変だな~」と思わなくもないですが(笑)、そこからどうやって、楽しく健康的に生きていくか、ですよね。
お酒とともに自らも熟成されていくなんて、酒好きからすると最高ですよ。
人生100年時代は、心と頭と体の健康がキーワードになりそうです。
心ですよね。頭と体も大切ですけど、お酒との付き合い方を考えるなら心は重要。
心と体はつながっているので、まずは健康第一です。
またアルコールは認知症リスクを上げるというデータがあるので、今のうちから飲み方を考えないと。
私もお酒の量を調整しながら飲んでいますよ。
基本は一日1合です。
昔と比べて、家飲みを少なくしました。
というのも私は外食が週3,4であるんです。
フルコースも結構多いので、家でも同じような量を食べたり飲んだりしているとものすごく太る!
意外ですね。
葉石さんもスタイルがいいので。
最大で8キロ太ったことがありますよ。
40代後半くらいの頃です。
体重計が壊れてしまっていて、面倒くさいので放置していたら半年で6キロ増。
さらに甲状腺の関係で2キロ増。
そしてとうとう母に注意されたんです。
「あんた、最近太ったんじゃない?」って。
実家の体重計に乗ってみたら数字がすごいことになっていました。
「お酒って、太るんだ!」と初めて気づきましたよ。
食生活や酒生活、そこに病気が重なったんでしょうか。
体の問題は、健康を見つめ直すきっかけになりますよね。
なりますね。
それと更年期も。
私は更年期が早かったんです。
プレ更年期っていうでしょう。
早い人だと30代から更年期が始まる人がいますが、私もそうでした。
ですからホルモンが不安定だったんでしょうね。
ある日、普通に会話していたら急に汗がドーっと!
ホットフラッシュですね。
はい。
部屋は涼しいのに、汗がポタポタ落ちちゃうくらい。
でも忙しさにかまけて、すぐに対処せずに放っておいてしまったんです。
そんなとき、主治医でもある産婦人科の先生が「ピルを飲んだほうがいいんじゃない?」と教えてくれました。
それから低用量ピルを飲み始めたら、体調がすごくよくなったんですよ。
ホットフラッシュも嘘のように改善しました。
そうした経験もあって、健康について考えるようになりました。
もう若くないんだなって。
もっと早く気づけ!と今なら思うんですけど(笑)。
これからの時代、飲み方を考えてお酒を長く楽しんでほしいですね。
そのためにどんな活動をしていく予定ですか?
イベントで日本酒をテイスティングしながら、健康についても一緒に考えてもらいたいですね。
お酒を楽しむだけでなく、体に与える影響についても、きちんとした知識をつけてもらうのもいいと思うんです。
「お酒は太るからNGなのか、いいえ、量に気をつければ太らなくて済みますよ」と本で書いたように。
女性に対してであれば、日本酒の美容効果を最初にお伝えした上で、お酒には乳がんリスクがあることもきちんと言及したい。
日本酒が世界でどう評価され、飲まれているかについてもお話したいですね。
日本人であることを誇りに思ってもらえますし、それによってもっと国酒である日本酒を学ぼうと思っていただけるかなと。
お酒とともに、楽しみや達成感を得られる幸せな時間を過ごせそう!
葉石さんが幸せを感じるのは、やはりお酒とともにある瞬間ですか?
お酒を飲んでいるときはもちろんですが、お酒だけじゃないですよ。
ぼ~っと本を読んでいたり、お風呂に入ったりする時間も好き。
お風呂って、無になれるじゃないですか。
それが心地よくて、暇さえあればスーパー銭湯や温泉に行きます。
ウォーキングや筋トレも、いいストレス解消になります。
あとは何と言っても、仕事以外の時間で、おいしい料理と一緒にお酒を飲んでいるときが特に幸せです(笑)。
お酒のおかげで人生が広がるとは、とても素敵な響き。
「酒は百薬の長」と言われていますが、心・体・頭の健康のためにもアラフィフらしいお酒の嗜み方を身に付けていきましょう。
写真:横山君絵 文:MOC編集部
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