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更年期ケアは女性ホルモン補充だけでなく、 ホルモンバランスを整えることが重要! 河村優子医学博士インタビュー 【第4回】 

 

更年期の辛い症状としてホットフラッシュが挙げられますが、気分の落ち込みや太りやすくなるといった症状もみられます。

病気ではないからと我慢してしまう方も多いと思いますが、実はきちんと総合的な検査を受けて調べてみると、食事で改善する場合もあるのです。

また、更年期の代表的な治療として女性ホルモン補充がありますが、実は他のホルモンとのバランスが大切なのです。

女性ホルモンを補充しただけでは、症状が改善しないことも。

総合的な検査を受けたことで、他のホルモンが不足していることが不調の原因だったことが分かる方が少なくありません。

第4回は、渋谷セントラルクリニック院長の河村優子先生に、女性ホルモン以外にも更年期症状に深く関係している、甲状腺ホルモンや神経伝達物質に関してお話しを伺います。



更年期の症状で代表的なものに、倦怠感というのがあると思います。

 

「朝起きるのが辛い」と言う方は、代謝ホルモンである甲状腺ホルモンが不足しているのかもしれません。

ビタミンA不足が関係しています。

若い人でも「むくむんです」、「冷えが強いのです」と言われる方が多くいらっしゃいますが、医学的に検査してみれば代謝ホルモンの値が数字ではっきりと分かるのです。

また、病気が原因で代謝ホルモンの値が低い方がいますが、病気でなくても値が低い方もいらっしゃいます。

病院で検査をして、「このくらいの値であれば、まだ甲状腺ホルモンは補充しなくても大丈夫」、「痩せるからホルモンを補充してください。」と言われる方もいますが、それは根本的に違うと私は思います。

 

更年期の症状の1つとして、太りやすくなる方もいますからね。

 

更年期で太りやすくなるのは、甲状腺ホルモンだけでなく他の要因も関わっています。

女性が歳を重ねると、若い頃とは違い脂肪が身体につきやすくなります。

女性ホルモンは脂肪から作られます。

つまり、細い人ほど脂肪が少ないので更年期の症状がひどくなる傾向があります。

女性らしい体つきの方は、更年期の症状に気付かない方もいらっしゃいます。

痩せすぎは良くありません。

人間の体は良くできています。

男性ホルモンであるテストステロンの値が低くても、筋肉を作くりにくくなり、太りやすくなります。

代謝は筋肉量に比例しますから、甘い物を食べても筋肉量の多い人の方が太りにくいですよね。

この甲状腺ホルモンの分泌を妨げるのは、第3回でお話しした体内に蓄積された有害金属なのです。

具体的に言うと、添加物、保存料、化学調味料、アルコールなどが甲状腺ホルモンの分泌を阻害するのです。

「体にいいからオーガニック野菜を食べなさい。」とよく言われると思いますが、ホルモンに影響与えるからなのです。

 

 

今まで漠然と「オーガニック野菜は体に良いのだろうな」と思って選んでいましたが、どのようなメカニズムで体に良いのか、きちんと分かっていませんでした。

特に更年期は、添加物や保存料を体内になるべく入れない事で症状が軽くなるのであれば、積極的にオーガニックの食品を選ぶようにしたいですね。

治療よりもまず生活の見直しが大切というのは、こういうことなのですね。

 

ホルモン補充をする前に毎日の食事で症状が改善できるのであれば、それが一番ですから。

有害なものをデトックスする効果もあります。

普段診察している中で、甲状腺ホルモンはかなり体に影響があると思います。

更年期の悩みのひとつである『むくみ』ですが、これは甲状腺ホルモン不足だけでなく、栄養面でのタンパク質不足でも起こります。

タンパク質は分子が大きいので水分を引き付けるのです。

食べていないのだけれども、ブヨブヨしてむくんでいて痩せないような場合は、タンパク質が不足している可能性が高いですね。

甘いものばかり食べている方は要注意です。

これも総合的な検査を受け、アルブミンやタンパク質の値を見ればすぐに分かります。

 

甲状腺ホルモンが不足した場合に現れる症状をもう一度確認させてください。

 

朝起きることが辛い、疲れやすいという症状が現れます。

朝、寝起きの体温を計ると36度以下の方も、甲状腺の機能が悪いか、ホルモンが不足している可能性が高いです。

 

私も朝、体温を計るとだいたい35度5分です。

 

甲状腺ホルモンが足りないのかもしれないですね。

 

朝起きるのが辛いのは低血圧の症状として一般的なものなので、あまり気にしていませんでした。

まさか甲状腺ホルモンが不足しているとは思いませんでした。

朝起きるのが辛いという方で、低体温でもあり体の不調を感じているのであれば、更年期だから仕方ないと頭から決めつけずに、総合的な検査受けるといいかもしれないですね。

 

これからお話しする神経伝達物質も、更年期の症状に影響を与えています。

脳内神経伝達物質には、アドレナリンやセロトニン、ギャバなどがあり、血液検査ではわかりません。

総合的な検査を行うことで、脳内神経伝達物質が足りているかどうかが分かるのです。

神経伝達物質が不足しないようにするには、ビタミンB群を含むタンパク質を食べるようにすると良いです。

卵を1日に10個食べるとコレステロール値が上がると言われていますが、実はあまり関係ありません。

卵アレルギーがある方は別ですが、卵は安価で質の良いたんぱく質ですのでお勧めの食材のひとつです。

そして、ものをよく噛んで食べるようにすることも大切です。

敢えて噛み応えのあるもの食べるようにすると、胃酸を分泌させてリラックス効果をもたらし、脳内神経物質の分泌を促します。

また、胃薬を常用している方も注意が必要です。

通常胃薬は2週間を限度に処方されますが、1年近く飲み続けていると、ビタミンB群が消耗されてしまいます。

胃潰瘍があるという方は別として、薬に頼らないようにしたほうが良いと思います。

神経伝達物質には他にもキャバがあります。

ご存知ですか?

 

 

はい。チョコレートのテレビ・コマーシャルでギャバという言葉を知りました。

 

チョコレートを食べた時に、にこやかになりますよね。

それがキャバの効果なのです。

精神科のお薬は、この神経伝達物質の分泌を促すものです。

アドレナリンを出す薬か、セロトニンを出す薬、ギャバを出して、元気になるようにしているのです。

あるいは、イライラを抑える薬もあります。

セロトニンもハッピー脳内物質です。セロトニンは腸で8割、脳で2割と云われています。

便秘になりやすい方は、セロトニン量が足りていない場合があります。

腸内環境良くすることで、セロトニン量を改善へと導きます。

アドレナリンは、やる気を出させ、血圧を上げる働きをします。

鉄分が無いとアドレナリンが分泌されないので、鉄不足の方はなかなか痩せないし冷えが強いという方が多いのです。

 

そうなのですね。鉄分不足を甘く考えていました。

 

『プチうつ』になったり、痩せにくくなったりするなんて、全く知りませんでした。

痩せたいと努力しているのに効果がでないのであれば、検査で鉄分と貯蔵鉄であるフェリチンが不足していないかを調べてみると良いでしょう。

鉄不足で、なかなか痩せない体になっていることが分かることもあります。

鉄分を補うような食事を取れば痩せやすくなるのに、自分の体の事を知らないが為に、無駄な時間と労力を使うはめになっている方は少なくないと思います。

また鉄不足は、肌荒れや大人ニキビの原因にもなります。

女性にとっては、大きな問題ですよね。

男性は女性とは違い、よほどの事が無ければ鉄不足にはなりません。

女性は生理の時に赤血球に含まれる鉄が体外に出てしまうので、鉄不足になりやすいのです。

貧血の方はレバーを食べると良いですね。

 

では、女性でも閉経すると、鉄不足が少しは改善されるのでしょうか?

 

そうですね。

そういうことになります。

でも注意しなくてはいけないのは、鉄分の取り過ぎは体を錆びさせます。

何でも、やり過ぎは良くありませんよね(笑)。

 

なかなか難しいのですね。

 

若い頃からずっと鉄分を含むサプリを服用していた方は、閉経後に検査を受けて体内の鉄分量やフェリチンの値を調べてみると良いかもしれないですね。

鉄分や貯蔵鉄の数値が正常であれば、鉄分のサプリは摂らないほうが良いのですから。

男性は基本的に鉄のサプリメントは飲む必要はありません。

世の中のマルチビタミンミネラル・サプリメントには鉄は入っていないはずです。

何故かと言うと、男性がずっと鉄分を多く取り過ぎていると肝臓悪くしてしまうのです。

男性でもアスリートの人は鉄不足の方が多いです。

ずっと走り続けている陸上選手は赤血球が壊れてしまうのです。

赤血球の中に鉄分が含まれているので、貧血の方が多くなります。

男性でもそういう方は、パフォーマンスが落ちてしまうので鉄分を補充します。

 

更年期の症状のひとつである『気分の落ち込み』も、体内の栄養素不足が関係している場合があります。

自然にセロトニンやギャバが出れば、抗うつ薬などを飲まずに済みます。

神経伝達物質の元となるたんぱく質をきちんと食べ、ビタミンB 群やマグネシウムが体内に充分にあるようにすると改善していく場合もあります。

 

 

“プチうつ”の原因は更年期によるものではなく、栄養面の問題で神経伝達物質が不足してしまっている場合もあるのですね。

 

ホルモンが足りない、神経伝達物質の働きが悪いというケースだけでなく、相関している場合もあります。

要するに、女性ホルモンのエストロゲンと神経伝達物質は関係があるのです。

例えば、エストロゲンが不足すると、セロトニンの効きが悪くなります。アドレナリンとギャバも関係していると言われています。

両方とも補充したほうが良いのですが、最初は栄養的な対策を取ると良いと思います。

「眠れません」、「やる気がないです。」、「甘いものがすごく食べたくなります。」という方は、食事やサプリメントで足りない栄養素を取るようすることで、快適に過ごせるようになる可能性があります。

 

ホルモン補充したいと私たちのクリニックにいらっしゃる方の中には、「ホルモンだけ下さい」と言われる方がいますが、言語道断です。

栄養面は完璧だけれども不調という方は別ですが、生活習慣を見直さずにホルモン補充だけをして症状を改善したいという考え方には賛成できません。

これは、医師やクリニックによって色々な考え方があると思いますが、私たちのクリニックでは、「過去の自分と比べても遜色のない健康状態、もしくは過去よりも良い健康状態を保ち続ける医療」を目指しています。

世界の医療の潮流は再生医療に進みつつあります。

再生医療が医療の主役になるにつれて、ライフスタイルがことさら重要になってきます。

ホルモンバランスの調整だけでなく、栄養やエクササイズ、デトックスをベースに、再生医療や様々な最新テクノロジーによる治療を組み合わせる方向に進んでいます。

国内の大学病院だけなく、海外の先端医療に携わる医師との提携により、クリニック全体で研鑽を積み、『最小限の努力で最大の効果』を患者さんに得ていただく為に、一人ひとりに合った理論的な『未病』を目指す治療を行っています。

 

第5回は更年期のホルモン補充療法について、引き続き渋谷セントラルクリニック院長の河村優子医学博士にお話を伺います。

保険適用の婦人科での更年期治療では殆ど受けることが出来ない、多くのアメリカの有名人やセレブが行なっている『ナチュラルホルモン補充療法』に関しても教えていただきます。

貧血の方は赤身のお肉を食べると良いですね。

 

文:北川りさ イラスト:町田李句



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更年期の強い味方!アンチエイジング検査とは? 河村優子医学博士 インタビュー【第6回】 

 

編集・構成 MOC(モック)編集部
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PROFILE

河村 優子

河村優子 医学博士
渋谷セントラルクリニック院長。日本抗加齢医学会専門医、日本麻酔科学会専門医、日本レーザー医学会認定医、特定認定再生医療等委員会 委員、FTP認定マットピラティスインストラクター、日本女性医学会会員、加圧トレーニング特定資格指導者/日本キレーション治療普及協会認定医。患者の目線に根差したフレンドリーな診療が評判。

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